掟破りのコピーゴールド/仲畑審査員長の講評
審査員長の仲畑貴志氏は、「46万点を超える応募作の中からファイナリストになる、これだけで優勝に近い評価ではないでしょうか。分母からすると日本で一番の広告賞なのだから、その最終選考に残るだけで十分称賛に値します」と、壇上に挙がったファイナリストたちをねぎらった。
「グランプリは作者(今野和人さん)のあいさつにあったように、日常からの飛躍でしたね。生活の一コマから、ハレの旅行のプレゼントというふうにジャンプする発想でした。アイデアは日常に転がっているんですね。
コピーゴールドは、今回は掟破りが起きました。通常、広告というのは効率至上主義です。15秒のCMだったら38文字ぐらいしかしゃべれない、そんなものではないかと思います。ところが今年は、100字近い文字数のコピーでした。当然、収まりませんが、これはいい発想の角度だったと思います。
プロの広告クリエイターは、効率よくやることになれています。それが広告主企業に提供できる武器です。効率よく伝えるためにクリエイティブジャンプを起こす。商品に大きな差がないために、表現のイメージを加えたりして差別化を図ります。それが武器ではあるんだけれども、ジャンプして届かないこともあります。ジャンプしたがゆえにターゲットがせまくなってしまうこともある。
本来、商品の価値がそのまま伝わるならそれでいいわけです。コピーゴールドは、ひとつのデータを見つけて処理をしたわけですが、商品に力があるならそれでいい、物理的な力があるならストレートに行けばいい、それを忘れてはいけないと思いました。
商品そのもの力をストレートにぶつける、そんな(広告コピーの)新しい文脈が生まれたと思います。
みなさま本当におめでとう。」
「宣伝会議賞」は、広告表現のアイデアをコピーとCM企画で競う公募形式のコンペティション。1962年、雑誌「宣伝会議」の創刊100号を記念して創設された。企業の実際の商品を課題としており、53年目の今回は45社が課題を提供した。