売り方自体をデザインしたい
−普段、平井さんが参加しての会議はどのように進むのですか。
鈴木:まずは我々が今、試作している商品を食べてもらいます。私たちがどんな商品をつくり、売りたいと思っているのかを理解してもらうと、思いが伝わりやすくなるので。
平井:実際に食べてみると、商品の良いところも悪いところも見えてくる。それが分かると、ちょっとした言葉の出し方も変わってきます。デザインとは表面的なものだけでなく、売り方のデザインも含めた提案が必要だと考えているからです。
鈴木:平井さんは、そもそも食に関心があって、食べることが好きなので、当社の仕事には合っていると思います。
平井:確かに。それはありますね。
−鈴木さんからの相談は、どんな形で聞かれるのですか。
平井:経営者の方が新しいことを考えられる時って、初めは「ぽわーん」としたアイデアから生まれるんです。それをデザインのような見える形にすると、急にアイデアが具体化して武器を持つというか。急激なスピードでプロジェクトが動き始めますよね。
鈴木:最近は我々が、発酵系の商品を加工して販売しているので「発酵」をテーマにした新しいことをやりたいという話もしていますね。
平井:日本人の食生活が変化し、漬物自体の消費量が減っている。また樽入りの守口漬は歳暮中元など贈答品として愛用されてきましたが、世の中の贈り物のスタイルも変わってきている。この中で、大和屋の技術や商品という資産は変えずに、生かしながら新しい挑戦ができるといいですね。何かが見えているわけではないので、手探りしながら、やっていく感じになると思いますが。
鈴木:よく、企業が中長期の事業計画を発表しますが、中小規模の企業が見えているのは3年先くらいまでと思います。大和屋ではない新しいブランドを始めようと言いだしても、具体的に内装などのデザイナーに相談を始めるのは1年くらい経ってから。そこから商品の試作ができてきて、実際に店舗の図面を描き始めるのは3年目くらいになって。中小規模の企業の場合は、それくらいのスピードだと思います。本当は、締め切りのない仕事はよくないのだけれど、逆に「えい、やっ!」で進める仕事の仕方も合っていないように思います。時間をかけながら、出てきた問題点に向き合って、コアとなるお客さまに満足できる品質の商品を世に送り出していく。ただ、どんなに美味しい商品であっても見せ方が悪ければ、お客さまに手に取っていただけない。その点で、デザインの力に期待する価値も大きいですね。
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