【4】24時間で1万2000件のサプライズを仕掛ける!
WestJet「12,000 mini miracles」(カナダ)
毎年クリスマスに、ユニークなサプライズ企画を実施することで知られる、カナダのLCC(格安航空会社)・WestJet(ウェストジェット航空)。2015年は「24時間で1万2000件の小さな奇跡を起こす」ことをテーマに掲げ、ロンドン、ニューヨーク、バンクーバー、ハワイ、ジャマイカなど19地点において、一斉にサプライズを仕掛けていった。
おもちゃ、クリスマスディナー、温かい毛布、紅茶、ブロードウェイのチケット、生まれたばかりの赤ちゃんの初めての航空券といったプレゼントはもちろん、買い物のお手伝いや、音楽学校への支援、おもちゃの寄付など、サプライズの内容はさまざま。同社のコーポレートカラーである青色のTシャツ&サンタ帽を身に着けた社員たちや、青色衣装のサンタクロースが、世界各地でサプライズを仕掛けていく様子は、同社の本拠地・カルガリーに設置された司令部でモニタリングされ、モニターには成功したサプライズの数がリアルタイムにカウントされていった。
最終的に実行されたサプライズは、目標を大幅に上回る3万1793件。クリスマスのワクワクする雰囲気の中、ウェストジェットのブランドを効果的に印象付けた。
【5】商品のデモンストレーションを兼ねた屋外広告
Purdy「Paint with accuracy」(米国)
刷毛(ハケ)をはじめとする各種塗装用品を取り扱う米国のメーカー・Purdy(パーディー)が、塗装用ブラシ「CLEARCUT」シリーズを訴求するために展開した屋外広告。一般的なポスターを掲出するのではなく、ブラシを使って実際に壁を塗って描き出した、巨大な“壁画”の形をとっている。塗装の際に、多くの人が苦労する、細い・狭い・小さいといった細かい部分も、同社の「CLEARCUT」ならキレイに・正確に塗ることができるという、商品の特徴をストレートに伝える広告だ。
壁にペンキで大きく描かれたのは、「PAINT」の文字。注目したいポイントは、レンガを塗って文字を描き出したのではなく、白・赤・青といったペンキで、レンガとレンガの間の細い隙間を塗ることで、文字を描き出したことだ。巨大な文字のすぐ横には、「WITH ACCURACY(正確に)」の文字と商品名・商品写真が貼られており、商品コンセプトである「PAINT WITH ACCURACY」を効果的に訴求している。シンプルな広告ながら、プロダクトのデモンストレーションの役割も果たしているユニークな事例と言える。
【6】縦列駐車もラクラク! 小型車の魅力を体験的に訴求
Smart「Smart Effect」(ポルトガル)
縦列駐車が苦手なドライバーは少なくないだろう。欧州でも日本と同様、狭い道の路肩に、ところ狭しとクルマが停められていることは多い。ダイムラー・クライスラーの子会社smart(スマート)が製造・販売する「smart」は、安全性能に加えて操作性の高さ、スタイリッシュなデザインで知られる小型乗用車。同ブランドがポルトガルで実施したプロモーションは、小型車ならではのメリットを、実体験を通じて訴求するユニークなものだ。
アパートの前にずらりと並ぶ路上駐車のクルマ。ギリギリ一台停まれるかどうか……というスペースに、一台のクルマが縦列駐車を試みる。今にも接触しそうになりながら、それでもアプローチしていくと、前後のクルマがみるみるうちに小さくなっていく。前後のクルマには事前に細工がされており、間に別のクルマが駐車しようとすると、車体が縮んでいく仕掛けになっている(メイキング動画には、クルマを改造する様子が描かれている)。狭いスペースでも、smartなら楽に駐車できるのだということを、実感してもらうことを狙った。
【7】昼は看板、夜はベッドに。すべての人に安眠を届ける
MoltyFoam「The World’s First Billbed」(パキスタン)
パキスタンの主要都市には、平均で50万人の路上生活者がいるという。彼らのほとんどは出稼ぎ労働者で、住むところもなく、夜は路上で眠る生活を余儀なくされている。そんな風景は、パキスタンではごく当たり前のものとして受け止められているようだ。十分な休息が得られず、疲れがとれぬまま翌日の労働に臨む–そんな路上生活者たちに安眠できる場所を提供しようと、パキスタンのマットレスブランド・MoltyFoam(モルティーフォーム)が設置したのが「Billbed」。昼間は看板(ビルボード)、夜はベッドに早変わりするという、前代未聞の屋外広告だ。
看板を90度回転させるだけで、簡易ベッドとして利用することができる。国内で特に路上生活者が多いとされる9都市・150カ所の道路脇に設置された。ケースムービーでは、Billbedを体験した人々の、なんとも清々しい表情を見ることができる。この施策は、多くのメディアに取り上げられ、賞賛されたうえ、SNSでも好意的な反応・コメントで溢れた。カンヌライオンズ2015ではブロンズを獲得したほか、各種広告賞で高い評価を受けた。自社の事業を社会的意義のある取り組みへとつなげた、アイデアが光る一例である。
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