株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第6号(2016年2月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。
取材対象者
岩井大輔 Daisuke Iwai
アトリエはるか 代表取締役
1981年生まれ、千葉県印西市出身。2004年芝浦工業大学工学部卒、同年に帝国データバンクに入社。2006年にアトリエはるかに入社し、2008年より取締役、2012年より現職。趣味は3人の息子と遊ぶこと、野球、トライアスロン。
わがままな女性のホンネに応える
ユーザー目線のサービス開発
駅ナカや駅直結のファッションビルの一角。仕事終わりのデートや合コン、友人・知人の結婚式と、それぞれの目的に合わせて、ヘアセットやメイクアップを受ける女性たちの姿が見られる。「アトリエはるか」は、「手早くプロにヘアメイクをしてほしい」という女性のニーズをとらえ、北は北海道、南は鹿児島まで、全国53店舗(2016年1月末現在)の美容サロンを展開している。
取締役副社長の西原良子氏自身が欲しかったサービスを事業化し、2000年12月に名古屋に第1号店をオープンしたのが始まり。施術内容によって異なるが、ポイントメイク10分、ヘアセット10分という短時間で、かつ価格は10分1800円と、一般的なサロンと比較して非常に安価だ。手軽さが支持され、現在では年間の累計利用客数は60万人にのぼる。代表取締役の岩井大輔氏は、「サービス提供価格は、原価からの積算方式で決まるのが一般的だと思います。しかし、僕らは消費者目線で『このくらいの金額であれば来てもらえるだろう』という判断基準で価格を設定しています。創業のきっかけも、ビジネスの組み立て方も、すべていち消費者の目線。それが、他の美容サロンとの違いだと思います」と話す。
既存の美容サロンとは一線を画すサービス。「ヘアセット」という言葉も、「美容業界で一般的に使われている『ヘアアレンジ』では、合コンや結婚式といった用途が伝わりにくい」と西原氏がつくったものだという。ヘアカットやカラーリングは行わないため、シャンプー台やボイラーなど大掛かりな設備がいらない。そのため、一般的な美容サロンは出店しづらい駅や商業施設の一角という限られたスペースでも展開が可能だ。ヘアセットとメイクという、ニーズの高いサービスだけを切り取ったことで、一般的な美容室の3分の1程度の投資で出店することができるという。出店場所にも、「雨に濡れたくない」「せっかくセットした髪型が風で乱れたらいやだ」「待ち合わせ場所から近いところがいい」といった、女性目線が垣間見える。