わがままな女性のホンネに応えて急成長—「アトリエはるか」代表の岩井氏に聞く

2カ月に1店舗開店
急速な事業拡大を実現

顧客の年齢層は上昇傾向にあり、現在は30~40代が全体の7割を占める。それに合わせて、内装をピンク色などの甘いトーンから、オールターゲットを意識したカフェのような雰囲気に。

商業施設のテナントは、原則的に1業種1社。鉄道各社の駅ナカ開発が加速するのに合わせ、2006年から2008年に一気に出店を進めることで、他社の追随を許さず、あっという間に不動の地位を築いた。「2カ月に1店舗というスピードは、当時の当社にとってはかなり“背伸び”でしたが、思い切った出店によって、『駅に一番近い商業施設にアトリエはるかがある』というイメージを早い段階で浸透させることができました」。

リピート利用を狙うサービスとしては珍しく、アトリエはるかは顧客データの取得・活用を行っていない。「コンビニで、名前と住所を尋ねられることはないはず。我々のようなクイック・カジュアルなサービス事業者にとっては、データ取得にかかるコストや手間のほうが負担になる。お客さまにとっての利便性も損なう恐れがあります。データを活用したプロモーションを行わなくても、日々の通勤・通学の途中にある店舗が、広告の役割も果たしています。駅にヘアメイクをしてくれる場所がある、とさえ認識してくださっていれば、『アトリエはるか』という店舗名は覚えていなくても構いません。駅名と『メイク』『ヘアセット』などのワードで検索すれば、トップにアトリエはるかが表示されるよう、SEO対策はしています」と岩井氏。駅にトイレやキヨスクがあるように、ヘアメイクサロンもある。アトリエはるかをインフラとして整備し、駅にあるのが当たり前という文化をつくることを目指している。

地域ごとの特徴づけでさらなる成長へ

事業の柱は、あくまでヘアセットとメイクアップ。年間60万人の来店客のうち、28万6000人がヘアセットを利用している。しかし、全国の主要駅への出店を完了した今、次のサービスとして、地域ごとの特徴づけに着手している。例えば四ツ谷店や東京八重洲店、錦糸町店であれば着物のレンタル、新宿店であればまつげエクステ、池袋店であればレンタルドレスなど……ヘアメイクを主軸としながら、+αのサービスの展開を進めている。結婚式場や国際会議場が新設されるなど、周辺エリアのデータを踏まえて商業施設側から要望が寄せられることもあるという。

「これまで『美容』と言うと、痩身や脱毛といった“コンプレックス解消型”のサービスがイメージされがちでしたが、僕らは自社が提供するサービスを“ファッション美容”と位置づけ、女性の身だしなみを整えることで、その日一日が楽しくなるようなサービスを提供したいと考えています。そのコンセプトの範疇であれば、ネイルサロンやフォトスタジオなど、サービスはまだまだ拡充の余地があると思います」。

入社当時、なぜアトリエはるかを利用するのか、女性の気持ちを知ろうと、利用客向けのアンケートを実施したという岩井氏。回答を見た時に驚いたのが、「キレイになりたいから」より「面倒だからやってほしい」という声が目立ったこと。そこで初めて、自社のサービスは「代行業」なのだと意識したという。日常から非日常まで、女性が「面倒」だと感じることを代わりにやる。その観点で考えれば、サービスのアイデアは無限に湧いてくるという。

ヘアセット、メイクアップを軸に、着付けやレンタルドレス、ネイルサロンなど、地域ごとに特色ある「+α」のサービスを次々と展開している。

(続きは本誌でご覧ください)


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