自社サイトをメディア化する広告主
ソーシャルメディアが成長するとともに、企業がアプリを制作し、ユーザーと直接コミュニケーションを取ることが増えてきます。そうすると、アプリで展開しているコンテンツを自社のホームページに掲載する企業も多くなります。また自社のホームページを自らの情報発信の場として積極的に活用する大手企業も出てきました。
インターネットを利用するときに、検索することが当たり前になった現在、誰もが名前を思い浮かべる会社や商品名を持っている企業は、とくに広告を出さなくても自然と自社のページに消費者を誘導できます。ですから、広告を出す以外に、自分たちのホームページの内容をもっと魅力的にする企業が増えています。たとえば、コカ・コーラ社のホームページは、自社商品の宣伝だけでなく著名人のインタビューやリゾートの訪問記が掲載されています。
また、ソーシャルメディア上に公式アカウントを作って配信するのは無料です。これは大きな変化ですね。今まで、企業が消費者に自社商品を宣伝しようと思ったら、メディアに広告を出す以外の手法はありませんでした。さらに、ソーシャルメディアでは消費者の反応を直接集めることができます。こうした消費者の行動データを直接、広告主の企業が集められるようになったのも今までと違う大きな変化です。
こうした自社ホームページを自社で「所有している=own」という意味で、オウンドメディア(Owned Media)と呼びます。それに対し、雑誌や新聞などのメディアを、彼らに広告費を「支払って=pay」情報掲載しているという意味で、ペイドメディア(Paid Media)と呼びます。
このオウンドメディアとペイドメディア、それにソーシャルメディアの3つのメディアをうまく組み合わせて情報発信をしていくトリプルメディア戦略が企業のマーケティング活動において重要になっています。
②に続く
志村一隆
メディア研究者など。水墨画家アーティストとして欧米で活躍。1991年早稲田大学卒業後、WOWOW入社、2001年ケータイWOWOW代表取締役を務めたのち、2007年から情報通信総合研究所主任研究員。2014年にヤフーに。2015年に独立。欧米のスマートテレビやメディアイノベーションを紹介したメディア・コンテンツ分野の第一人者。2000年米国エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号取得。第一回「独立メディア塾」優秀賞受賞
「IT」「デジタル」「インターネット」など分かっているようで、理解していない言葉を一から丁寧に解説。また、「Google」や「アップル」などIT大手企業の成り立ちと、ビジネスモデルを説明した上で、今後のIT産業の展望まで言及し、就活だけではなく、入社後にも役立つ情報を提供します。デジタル・IT業界のすべてを「とにかく、丁寧に、世界一わかりやすく」こだわって紹介した、いままでにない一冊。デジタル・ITを一から学ぶための教科書。