株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第6号(2016年2月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。
企業理念は「約束」
ホームページのコンテンツ作成、ブランディング戦略において欠かせないのは、企業理念を明確に定め、社内外に発信することだ。その理念は、社会やお客さまに対するメッセージ、あるいは約束であり、全社員・全部署がそれに基づき一丸となって邁進できるようにすると良い。例えば、スターバックスの「Our Starbucks Mission」は「人々の心を豊かで活力あるものにするために、ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」である。この理念に基づき、共有する価値観・行動規範を定めている。すなわち「Our Coffee:常に最高級の品質、倫理的、心を込めて、こだわり」「Our Partners:情熱をもって仕事をする、多様性を受け入れる、働きやすい環境、尊敬と威厳」「Our Customers:心から接す、お客様とのつながり、人と人とのつながり」「Our Stores:自分の居場所、くつろぎの空間」「Our Neighborhood:コミュニティの一員として責任を果たす」「Our Shareholders:実現、ともに成長を分かち合える」となっている。社会やお客さまに向かって、自分たちがなすべきことを宣言し、それを共通の価値観とする。これがブランディング戦略の基本だ。もちろん、それは社員任せにせず、トップ自らのリーダーシップによって決定しなければならない。
経営の方向性を定める
次に参考にしてほしいのは、「ランチェスター戦略」だ。これは、勝ち方の原理原則を示したもので、書店に行けば関連書籍が並んでいる。ランチェスター戦略でよく例に出されるのは桶狭間の戦いで、「なぜ織田信長は2000~3000の兵力で今川義元2万~3万の大軍を破ることができたのか。戦は単に数ではなく、天候や地形などを加えた戦場での力関係で決まるからだ」というものである。具体的にみると、「戦闘力=武器効率(質)×兵力数(量)」という法則がある。つまり「広域だと、兵力数が2乗倍で作用するので、数が有利に働く。そのため、強者は広域で勝負すればいいが、弱者は質を上げ、兵力を集中しなければならない」となる。また、「競合局面(市場)における自分と敵との力関係で決まる」ので、強者はミート戦略でいいが、弱者は局地戦・接近戦・一点集中・一騎打ちの差別化戦略に持ち込まなければならない。ビール業界で最も弱かったサントリーは、勝てる場所をプレミアムモルツ市場と定め、局地戦で勝利した。
コンテンツへの落とし込み
ブランディング戦略と、特定市場でナンバーワンを目指すランチェスター戦略の実践によって、企業の方向性が明確になり、社員のベクトルが一つになる。それをホームページのコンテンツに落とし込めば、伝わり方がこれまでとは全く異なるものになるに違いない。さらに両戦略は、事業を通じて社会とどのように向き合い、貢献しようとしているのかが明らかになるので、ニュースを生み出しやすい企業体質にもつながってくる。
管野吉信
広報コンサルタント
広報ブレーン 代表取締役
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員等を務める。その後、東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)に広報室長として移るも、複数の不祥事が発覚し、執行役員として後始末に奔走。2012年に株式会社広報ブレーンを設立。
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