【前回】「自社サイトをメディア化する広告主」はこちら
メディアのビジネス的な役割
前回の記事で紹介したトリプルメディア戦略とともに、広告を大きく変えているのが、消費者の動向データをもとに情報発信する仕組みです。
今まで、メディアはそのコンテンツの種類によって、特定のターゲット層を集めていました。つまり、サッカー誌であればサッカーファンが、写真週刊誌は中高年男性が読者でしょう。広告クライアントは、メディアの先にいるターゲット層を考えながら情報発信していたわけです。
しかし、ソーシャルメディアだけでなく、楽天やアマゾン、ヤフーなどさまざまなサービスの会員登録がインターネット上で行われることによって、消費者の足跡がそのような企業側に残されていきます。その足跡を辿れば、ネットショピングを展開している企業は、誰がどんな商品を好んで買っているのかがわかります。会員登録をしていれば、その人がどこに住んでいてどんな属性を持っているのかがわかるのです。つまり、今までメディアしか知らなかった消費者のデータをメーカーやお店が把握できることになります。
トリプルメディア戦略によって、広告を出す側の企業が自社メディアでの情報発信を始めました。次に、ネットショッピングなどのサービス企業が今までのメディアの担ってきた消費者との架け橋になる役割を担い始めています。
とても画期的な変化ですが、一つ問題点があります。それは、メディアのパワーが衰えたら、ニュース記事やテレビ番組などのコンテンツ制作の機能を誰が担うのかという点です。
コンテンツの制作には、取材、撮影、編集など時間と手間がかかります。メディアはその費用を広告費という形で企業からもらうことで賄ってきました。広告クライアントは、資金はありますが、コンテンツ制作のノウハウはありません。では誰が作るのか?そこにビジネスチャンスがあります。インターネットはメディアと広告主、そしてコンテンツ制作と広告といった関係性までも変えてしまっているのです。
③(3月30日公開予定)に続く
志村一隆
メディア研究者など。水墨画家アーティストとして欧米で活躍。1991年早稲田大学卒業後、WOWOW入社、2001年ケータイWOWOW代表取締役を務めたのち、2007年から情報通信総合研究所主任研究員。2014年にヤフーに。2015年に独立。欧米のスマートテレビやメディアイノベーションを紹介したメディア・コンテンツ分野の第一人者。2000年米国エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号取得。第一回「独立メディア塾」優秀賞受賞
「IT」「デジタル」「インターネット」など分かっているようで、理解していない言葉を一から丁寧に解説。また、「Google」や「アップル」などIT大手企業の成り立ちと、ビジネスモデルを説明した上で、今後のIT産業の展望まで言及し、就活だけではなく、入社後にも役立つ情報を提供します。デジタル・IT業界のすべてを「とにかく、丁寧に、世界一わかりやすく」こだわって紹介した、いままでにない一冊。デジタル・ITを一から学ぶための教科書。