プログラマー出身のアートディレクターが考えるワークするデザインとは?

博報堂アイ・スタジオのインタラクティブディレクター兼アートディレクターとして活躍する柳太漢さん。もともとはプログラマーとしてキャリアをスタートしたが、今ではGoogleやHUGEのWebデザインを担当するまでになった。美大出身でない柳さんが、なぜデザインの第一線で活躍でき、評価されているのか、その理由について聞いた。

博報堂アイスタジオ コミュニケーション・デザインセンター インタラクティブディレクター アートディレクター 柳太漢 氏

——入社時はプログラマーとして採用され、今ではインタラクティブ領域だけでなく、アートディレクターとしても活躍していると聞きました。これまでのキャリアについて教えてください。

まずは大学でソフトウェアとサーバーサイドを学び、htmlやjs,cssといったフロントエンドプログラミングは独学で学びました。制作会社で1年働いた後、博報堂アイ・スタジオにデザイナーとして採用されました。当時は、フラッシュ全盛の時代。フロントエンドプログラミングに強かったので入社直後は、フラッシュを多用したWebサイトをつくることが主な仕事でした。

さらに美大を出ているわけではないので、デザイナーとしての素養が弱かったのですが、自分自身としてはデザインの分野も志していました。博報堂アイ・スタジオは、社員の希望を応援してくれる社風ということもあり、入社後から猛勉強しました。

——どのように勉強したのでしょうか。

デザイナーになるために、心がけたポイントは3つあります。

まずは、①好きな作品を真似をすること。そして、②良い作品に大量に触れること。最後に、③それらの作品がどう成り立ったかを考える、ということです。

具体的には、手を動かして全く同じものをつくってみました。こういう手法、こんな想いをこめてつくっているのではと予想しながら試行錯誤して、まるでスポーツ選手みたいに作業をひたすら繰り返していましたね。

——デザイナーとしての転機となった仕事はありますか?

入社2年目の時に、「東京インタラクティブ・アド・アワード」のグーグルイノベーションアワード最優秀賞を「ちきゅうどうぶつえん」という企画で受賞したことですね。これは、Google Maps上に画像検索した写真を集めて動物園をつくろう、という企画です。

博報堂の同年代の仲間とチームで参加したのですが、彼らから広告の考え方に必要なものの見方を吸収しました。当時の自分は「デザインは、かっこよく動けばいい」と、デザイン先行で考えていたのですが、制作過程のディスカッションでは、「子どもが学習に使うならどんなインターフェイスにすべきなのか」「子どもにとって価値あるものとは何だろう」といった本質的なことを話し合い、自分の考え方を改めるきっかけになりました。

「HUGE」のコーポレートサイトも柳さんの仕事

全国でウェディング事業やレストラン事業を展開する株式会社HUGEのコーポレートサイトも担当。社長の「その街になくてはならない、資産となるレストランをつくる。うちの店ならではの活気とライブ感を伝えたい」という熱い想いから、コーポレートサイトというデジタルだけの領域ではなく、コーポレートブランディング、という視点でプロジェクトを進行。

まずHUGEの思想を表現するスローガンの提案。それに基づきアートディレクションを定め、全メディアに共通して使用できるデザインアセットの制作を徹底して行った。コーポレートサイトは、インナー(社員)にとっては自社を誇りに思えるモチベーション装置として、アウター(顧客)に向けてはプレゼンテーション装置として機能するように意識し制作した。

その後、自動車メーカーやレストランなど、対応領域をひろげ、さまざまな仕事を任せてもらえるようになりました。

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