——いい仕事の依頼が継続して入っているのですね。柳さんのデザインのどういった点が、評価されているのでしょうか?
キャリアがプログラマーから始まったことと関係があるかもしれませんね。プログラムで入力する文字は、1文字間違うだけで全てを正常に動かせなくするエラーを吐きます。同じように、「デザインも一つ一つにも必ず意味がある」と考えて、そのデザインがワークするかをいつも考えています。
現在、広告キャンペーンで最終的にユーザーを連れてくる場所はWebサイトであるケースが多いですよね。たとえば、自動車であれば、CMを見て興味を持てば、Webサイトへ詳しい情報を調べに来ます。だから、Webサイトは伝えなければいけないことが詰まった情報基地のような場所です。
そこでは、ユーザーが欲しいと思った情報を、欲しいと思ったタイミングで提供できないといけない。例えば、スマートフォンサイトであれば、どこにボタンを置けばクリックしやすくて、ユーザーを正しい場所へ運べるのか、配慮しなければいけないということです。そう考えていくと、載せなければならない情報とやるべきことがおのずと決まってくるのです。
——ワークするデザインが、柳さんの強みなのですね。
そうですね。その象徴とも言える仕事が、香港で新しく開業した「NWB(Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank)」という投資銀行のCIのデザインです。中国名に太平洋を現す一字が入っているのですが、それは創設者が「太平洋の片隅に金塊が埋まっている=新しいチャンスが眠っている未開拓の市場がそこにある」といった意味を込めたものでした。それならばと、世界の海を自由に駆け巡り、成功へと導く原動力の象徴として、帆船をモチーフにしたデザインが思い浮かびました。
工夫したのは、グラフからCIを作ったことです。右肩上がりに成長する資産運用を表現したグラフを、帆としてデザインしました。これから船出する新しい顧客の資産運用を必ず良い方向へ成長させる、という思いを込めてあります。これも、デザインに意味を与えることができた事例だと思います。
このCIは、2015年に、あるデザインアワードのロゴ部門で、賞をいただききました。博報堂アイ・スタジオは、こういったCIのコンセプトワークもできるということを示せたことにも価値があったように思います。
——個人の成長が、会社の成長にもつながっているのですね。博報堂アイ・スタジオで働くことの魅力はどこにありますか?
基本的に、個人の意思をすごく尊重してくれます。入社したばかりでも、ちゃんと向き合って考慮してくれる体制があったことが、いまの自分につながっています。
そして、結果を出せば出すほど、自由に仕事をさせてくれます。新しい分野の仕事でも、信頼して任せてくれる土壌があったからこそ、企業のCIの仕事にも取り組めたように思います。
——最後に、今後のキャリアの展望を教えてください。
今はデジタルが主軸の時代です。将来的にはそれがもっと加速して、人々の生活になじんでいくでしょう。その時代にニーズに合わせて制作会社も、広告会社も役割が変わってくる気がします。今までは1から10、10から100というあるものを広げることに特化してきましたが、今後は、これまでの経験をもとに商品開発に携わったり、企業の思想をつくったり、「0から1」を生み出すような仕事をしたいと思っています。
問い合わせ先
株式会社博報堂アイ・スタジオ
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