メーカーが思うほど、消費者は商品について知らない
ケロッグのオンライン戦術において重要な役割を担うのが、「コンテンツ・マーケティング」だ。ダン氏によると、シリアル製品の売上減を招く要因のひとつは、「商品についての知識不足」だという。「多くの人が、シリアルは糖分を過剰に含み、健康的ではないと考えている。製品の中には、健康にフォーカスし、より糖分の少ないものもあるのだが、世間一般の認識では糖分の多いもののほうが有名なのだろう」。
例えば、とダン氏は続ける。「『ココポップス』や『フルーツループ』といった製品は、子どもが学校から帰ったあと、疲れていて元気になりたいときに、たまのスナックとして食べるのに適している。(このように)、製品それぞれに適したシチュエーションを示すソーシャルメディア投稿などのコンテンツを数多く制作しているところだ。誰が見るのか、によって異なるコンテンツが必要だ」。
ダン氏によると、ケロッグには大きく分けて2つの主なオーディエンスがいるという。一般的な消費者と、健康問題についての専門家や、世論に影響を与えるインフルエンサーだ。「ヘルスケアの専門家向けには、科学的根拠に裏打ちされた専用のポータル(サイト)を用意した。一般消費者向けには、コンテンツはソーシャルメディアで共有しやすい内容で、より生活に即した内容にしている。動画なども用意し、インタラクティブなWebサイトだ」。
エーミン氏は、「ケロッグは、ブランドを消費者中心主義に移行させようとしている」と話す。シリアルバーの「ニュートリグレイン」もそうした試みの中にある。ライフセーバー向けの大会などを開催し、長らく「鉄人」のイメージを築いてきた製品だが、ケロッグはより人間らしい、温かみのある印象を持たせようと努めている。
昨年の「Unstoppable」キャンペーンでは、現代のオーストラリア人に焦点を置いたコンテンツを多用した。「特に、人間的なレベルでのコミュニケーションのメリットについて、期待以上のことを学んだ」とエーミン氏は話す。「消費者の言葉で話し、作り話ではないキャンペーンで人々を描くと、ブランドにもポジティブな影響を与え、ソーシャルメディア上の評価も高い結果となる」。
エーミン氏は、すべての製品に同じやりかたが通用するわけではないと認める一方で、同社のデジタルマーケティングチームが、「ニュートリグレイン」で得た知見を、ほかのブランドの施策に生かせるかどうか、検討していることを明かした。
自社サイトと小売サイトの垣根を超える
ケロッグに大きな手応えを与えたものがもうひとつある。Eコマース(EC)だ。エーミン氏は「当社はEC業者ではないし、直販も行わない方針だが、」と前置きしながら、「購買に至るまでの消費者の体験をいかにシンプルにするか、には関心を抱いている」と話す。
同社は、米国ケロッグで実施した手法をアジアにも応用するつもりのようだ。「アジア太平洋での最初のステップは、当社のWebサイトと小売のWebサイトをより簡単に、“いますぐ買う”ボタンでつなぐことになるだろう」(エーミン氏)。消費者は、ケロッグのサイト上で商品を選び、小売のサイトで決済できるようになる。APIで可能なのだという。
原文:Adrian Peter Tse/訳:AdverTimes編集部
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