台本があるから、テレビ番組はつまらなくなる!(ゲスト:矢追純一さん)【前編】

矢追さんがつくっていたテレビ番組は台本がなかった!

矢追:僕の番組はだいたい台本ないんです。台本をつくるからつまらなくなるわけです。台本を書いてる人、あるいはそれをディレクションしようとしている人の意志でつくるわけでしょ。だから、その人を超えられないんですよ。しかも、この人達は100年も生きてるわけじゃないから、大した経験をしてないわけですよ。その中で、学校で教わったことや本で読んだこと、テレビで見たこと、ネットでサーフしたことなど、みんな人の話ばかりを掻き集めているのが自分の知識じゃないですか。そういう人がいろいろ考えてつくったものって、その人の域を超えられないから、あまり面白くない。ですよね、当然。

澤本:想像を超えることができないと。

矢追:僕の場合はそういうものを一切やらないで行き当たりばったりで何が起きるかわからないというところが見てるほうもドキドキするだろうと思ってるわけです。ユリ・ゲラーの番組をつくるときも、何も前もって用意はしないんですよ。ただ、ユリ・ゲラーが「いろいろな金属を集めておけ」というから集めておいて。あとは観客席をつくって、電話がかかってきたら受けるためのオペレーターの女の子をいっぱい置いておくだけですね。それでユリが何をやるかはわからないから、お任せなんです。

権八:えぇっ!?

澤本:じゃあ、わからないで撮ってるんですか? リハーサルもやってないと?

矢追:はい、そうです。リハーサルもやってません。

権八:ちなみに、そのとき澤本少年はスプーン曲げにチャレンジして?

澤本:曲げてた。僕はできなかった(笑)。でも、いろいろな方の時計が動いたりしたんですよね。

矢追:あのとき、巨人軍の水原(茂)監督っていたじゃないですか。あの方の息子さんが日本テレビに入ってたんですよ。彼は僕より1期上ぐらいかな。それが電話してきて、「矢追、おまえ大変だよ」と言うから、「どうしたの?」と聞いたら、「うちにあった掛け時計を倉庫から引っ張り出して来て、曲がってる針を真っ直ぐに伸ばして置いておいたら、カタカタ動き出した」って言うんですよ。僕は「へー。でも、みんなそうだよ」って言ったんですね。そしたら、「いやいや、電池入ってねーんだよ!」って。

権八:えー!

矢追:電池入ってなくて40分ぐらい動いたって言うんですよ。あー、そういうこともあるんだと。そのとき初めて僕も「すごいな。人間ってこういう能力があるんだな」と思って。じゃあ、これをちゃんとみんなが使えるようにいろいろ研究したらいいんじゃないかと思ったの。にもかかわらず、やっぱり日本のマスコミは人を蹴落として喜ぶという。あれはインチキだの何だの言い出して。

権八:そうですね。

矢追:しかもどこかの雑誌が、金もうけのためにいたいけな子どもをめちゃくちゃにして。その子は結局、今どこに行っちゃったかわからないですね。身を持ち崩しちゃったというか。だって、誰も相手にしないもん。

権八:子どもというのは、超能力少年みたいな子がいたんですか?

矢追:そうそう。その子が力でスプーンを無理やり曲げるところを撮影したと言って、鬼の首を獲ったように特集したんですよ。2回も3回もやったのね。その頃は顔写真も隠さないし、名前も住所も何もかも全部そのまま出しちゃってる。この子、敵わないじゃないですか。学校行ってもどこへ行っても嘘つき呼ばわりされて、結局ご両親は離婚されて、彼は生きていく術がないからヤケクソになって、いろいろなことをやって、その後、どこ行っちゃったかという気の毒なことになっちゃったんですよね。僕はそれに憤りを感じました。雑誌を売りたいがために子どもをめちゃくちゃにしていいのかと。人をいたぶって喜ぶという、そっちへ走るというのはどうもわからないんだね。

澤本:走る方向を間違えるとそうなっちゃいますよね。

矢追:今、なってますよね。

次ページ 「ユリ・ゲラーさんとの偶然かつ必然な出会い」へ続く

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