【前回コラム】「台本があるから、テレビ番組はつまらなくなる!(ゲスト:矢追純一さん)【前編】」はこちら
今回の登場人物紹介
※本記事は1月30日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。
『11PM』のディレクターは食堂や衣裳部の人だった
権八:矢追さんと言えば、当時、一世を風靡した番組『11PM』や『木曜スペシャル』の名物ディレクターでした。前回のユリ・ゲラーさんとの出会いのお話はなかなかすごいエピソードでしたけど、UFOには興味があって、そちらのほうへ行こうと思われたんですか?
矢追:最初はそんなもの全然興味ありませんでした。『11PM』は結構有名になった名物番組ですけど、あれは深夜番組の走りなんですよ。最初はもちろん視聴率もないし、だいたいディレクターがいませんでしたからね。
澤本:ディレクターがいなくて番組をやっていたんですか?
矢追:なり手がないんですよ。そんな視聴率が取れないような番組はね。それからプロデューサーが忙しいから、自分の手下をそんなところに出したくないわけですよ。みんなが囲っていて、全然ディレクターがいないので、『11PM』のプロデューサーが局内を全部走り回って、余った奴を連れてきたんです。ある意味、不良社員ですよね。言うことを聞かないし、「アイツどっか行ってくれないかな」というのがいろいろな部署にいるじゃないですか。そればかりを連れてきて。だから、衣裳部にいた人やメイキャップの人など。
権八:えっ、そういう人までディレクターとして駆り出されて・・・マジっすか?
矢追:駆り出されて。それから食堂の主任だった人も。
一同:笑
矢追:そういう人をみんなディレクターにしてね。プロデューサーが太っ腹で、何でも好きなものをやれと。ケツは俺が拭くという人ですね。
澤本:かっこいいですね。
矢追:かっこいいんですよ。だから、いちいち申請しなくていいんです。自分がこういうものをやりたいと思ったら勝手にやればいいから。それで、僕の番になったときに何をしようかと思って。その頃、気になっていたのは、世の中の人が全部一点を見据えてゾンビのように歩く姿だったんです。日本人ってブラブラ歩く人が少なくて、用があるかないかわからないけど、目的地を見つめて、急ぎ足でサッサと歩くじゃないですか。これは変だなと。外国へ行くと、みんなブラブラしてるんですよ。
澤本:確かに(笑)。
矢追:なんでそうなのかなと思うと、どうもみんな精神的に余裕がないせいだろうと。日本全体が余裕のないまま行けば、いずれは煮詰まっちゃって大変なことになるぞと思ったので、「たまには立ち止まって空を見ろよ」という番組をつくろうと思ったわけ。ところが、テーマはいいけど、深夜番組のエンターテインメントで、空を見ようという番組はなかなか思いつかないじゃないですか。
権八:ないですね。
矢追:どうしようかと思ったときに本屋さんで空飛ぶ円盤の本を見つけたんですよ。
澤本:え、たまたまですか(笑)?
矢追:たまたま目がいったの。今考えると、アダムスキー(注:ジョージ・アダムスキー。UFOコンタクティーの元祖として知られる)の書いたやつで。それをパラパラ見たら、どうやら宇宙人がそういうものに乗ってきているらしいと書いてあったので、じゃあ、これにしようと。
権八:本当ですか(笑)? そういう流れだったんですか?
矢追:そうです。空飛ぶ円盤が来ているから見ましょうと。
権八:空を見ましょうと(笑)。
矢追:そう。そのとき初めてスタジオのカメラを屋上にあげるということを考えたんですよ。
澤本:日テレの屋上にあげたんですね。
矢追:スタジオでは大橋巨泉がMCで、屋上にもう1つカメラがあって、二元放送にしようと。ところがその頃、屋上にカメラを出したやつはいないんですよ。それは無理だから。スタジオのカメラは屋上に出すようにできてないわけ。今みたいに小型じゃないので。この机ぐらいでかいんだよね。
権八:でかいですね。
澤本:1メートルぐらいありますもんね。
矢追:技術部は反対していると。技術部長に呼ばれて行ったら、「おまえか、矢追ってのは。屋上にカメラ出すとか言ってんだってな。ダメだ」「なんでダメなんですか?」「前例がない」「前例がないってテレビ局でそういうことを言ってちゃダメでしょ」と屁理屈を並べたんですが、そのうち部長が気になったらしくて、「なんで屋上にカメラを出すんだ?」と聞くから、「いや、宇宙人さんが空飛ぶ円盤に乗ってくるので、それを撮るんです」と答えたら、「お前、頭おかしい」とイスからずり落ちてましたね。
一同:笑
矢追:それでますますダメになったんですよ。
権八:そうでしょうね(笑)。