——テクノロジーを広告に導入するときの注意点はありますか?
僕らのようなエンジニア系の人間は、ついつい新しい技術や表現を使って派手なことをやりたがる傾向にあります。
しかし、テクノロジーは単なる手法にすぎません。テクノロジーありきで企画を考えるのではなく、広告として伝えたいことを明確にして、どのような技術を使えば目的地、つまりクライアントの課題解決に着地できるだろうかと考えることが正しい技術の使い方です。
最近も、宮城県石巻市が主体となり、博報堂、東北博報堂と「泳ぎ寿司(The Swimming Sushi)」を制作し、僕らはシステム全般の開発を担当しました。イベントの目的は、震災による風評被害を払拭させること。震災から5年たった今、実際に石巻に行って現地の人から話を聞くと、「石巻に足を運んでほしい」と言っていたことが印象的でした。
「泳ぎ寿司」は三陸・金華山沖で収穫される海産物が出荷され、寿司となりお客様に提供されるまでの過程を参加者に疑似体験してもらうことで、食材に対する安心感を醸成し、震災による風評被害を払拭させようというイベントです。
会場内に特設カウンターを設営し、同市の寿司職人が実際に寿司を握ります。その寿司を、プロジェクトマッピング技術を用いて、泳ぐ魚のインフォグラフィックに変化させ、提供される寿司ネタが育って、漁獲され、提供されるまでをアニメーションで表現することで”学べるお寿司屋さん”になっています。また、特設カウンターでは2つのモーションセンサーを活用し、体験者の動きに応じて、さまざまなインタラクションを体感できる仕組みも用意しました。
イベントを通して、三陸の魚を触って、食べて、見聞きして、そのおいしさを感じてもらい、実際に石巻に足を運んでもらいたいです。
——あくまで目的を達成するために、必要なテクノロジーを採用していくという姿勢が大切なのですね。
そうですね。僕らはテクノロジーを活用する技術者ですが、当然、広告についての勉強もしています。博報堂アイ・スタジオでは今、「統合デジタルマーケティング」を掲げて、データドリブンな施策を実行するための体制を整えています。新しい体験を提供しながらも、その結果がどう成果につながったのか分析することができるのです。
広告分野だけでなく、「こんなことをやりたい」という相談をもらえれば、それを実現するためのさまざまな手法を提示して、その成果まで見通せる。これまで僕らが「チーム」としてやってきた経験の全部が、自分たちの強みだと思っています。
問い合わせ先
株式会社博報堂アイ・スタジオ
住所:東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビルヂング
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