最小限主義、ミニマリストが買ったもの

キャンプ用の椅子でダイニングテーブルを囲む

—ミニマリズムを実践するなかで、買い物はしますか。

買い物は結構しています。ミニマリズムといっても、生活に必要な物は買いますし。最近は、ミニマリズム的な空間を実現するための買い替えが多いです。例えば、ガスコンロをオーブン機能付きのものに買い替えようと検討中ですが、コンロにオーブン機能があればトースターを減らせますし、電子レンジも電子レンジ機能だけのシンプルなデザインのものに替えることができます。

布団やタオル、シーツも紺色のものに買い替えています。タオルが足りないとか、使い古したということではありませんが、空間の色を統一することで気持ちがクリアになるミニマリズムを目指しています。

—機能を集約して、物を減らすための買い替えですね。

ミニマルサイズの白磁のお茶碗は、ご飯をお代わりしても食べ過ぎないのがいい。

ミニマリストは買い物をしないとか、文化的な生活を捨てているといった批判もありますが、そんなことはありません。ミニマリストは買い物をしますし、体験型消費にもお金を好んで使います。僕は物を捨てることが得意なので、捨てる行為とセットで買い物をしていますね。

先日、家族で訪れた日本民藝館(東京・駒場)で、妻が白磁のお茶碗を気に入って、「今のお茶椀を捨てる代わりにこれを買いたい」と言うので、「それならいいよ」と賛成しました。新しいお茶碗は、今までのお茶碗よりもサイズが小さいので、ご飯をお代わりしても食べ過ぎることがありません。デザインもミニマルなので、僕も気に入っています。日本民藝館のミュージアムショップには、日本民藝館展で入選したいい品物が置いてあるんです。

—物を買う基準としては、質を重視して選んでいるのでしょうか。

いいものは好きですし、「長く大事に使うためにいいものを買う」という考え方もあると思います。ただし、僕の場合はそれが基準ではありません。欲しいものがあれば「捨てて買う」主義なので、質がよくても、買い替えしづらい高価な品物は選ばないかもしれません。それに今は、手頃な値段で「いいな」と思えるものがたくさんありますしね。

—物を捨てられるからこそ、そのときに欲しい物を買えるわけですね。では、どのような物に惹かれますか。

デザイン的にもおしゃれなポンチョを愛用し、傘のミニマリズムを実践している。

買った物を実際にお見せしましょう。まず、コールマンの椅子です。元々、木のダイニングテーブルに木の椅子を合わせて使っていましたが、古くなった椅子を買い換えるにあたり、キャンプ用の椅子がいいなと思ったのです。ちょうどキャンプに興味を持ち始めていた時期だったことも理由です。木の椅子は重くて持ち運びがしにくいうえに、たためないので片付けられません。キャンプ用の椅子なら座り心地がよく、軽くてたためるので移動が簡単です。室内に置く物ではないのかもしれませんが、とても気に入っています。

ベランダに置いてあるバーベキューコンロもキャンプ用です。ダイレクトデザインの「ノートブック」という商品ですが、ノートブックのように折りたたんで収納することができます。炭でお湯を沸かしてコーヒーを淹れたり、ベランダで星を見るときに暖を取ったりしています。

最近はポンチョを買いました。幼稚園の子どもの送り迎えは私の役割ですが、雨の日は買い物袋と子どもを抱いて傘まで差さなければならないので、大変です。そんなとき近所のアウトドアショップでこのポンチョを見つけ、ひとめぼれしました。

このポンチョなら、荷物と子どもを覆うことができて、傘をさす必要もありません。傘のミニマリズムができると思ったのです。ポンチョを着る人はまだ多くはありませんが、僕がポンチョを着ることで、ポンチョ文化の広がりに貢献できればいいなと思っています。

次ページ 「空間自体にコンセプトがある場所」へ続く

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