嶋さん、日本のPRパーソンにはクリエイティビティが足りませんか?

PRパーソンは説得力がなくちゃダメ!

もう一つのPRパーソンの特技はファクトベースで考えること。広告表現はフィクションですが、第三者をしっかり説得していくPRにおいて、ファクトをベースにストーリーを構築することが重要になります。

PRは世のステークホルダーを巻き込み合意を形成していく仕事です。もちろん、人の気をひくためにサプライズ的な要素は必要ですが、同時に第三者にしっかり納得してもらうためにはやはりファクトが重要な役割を果たします。

2015年のカンヌのPR部門のグランプリは、プロクター・アンド・ギャンブルの女性用生理用品ブランド、オールウェイズのキャンペーン「ライク・ア・ガール」でした。女性に寄り添うブランドとして、世の中の女性に対する見方を変えていこうとした意欲的な試みです。

10代の女の子に「女の子っぽくしてみて」と問いかけると、かわいらしく振る舞うのですが、もっと年下の子供たちに同じ問いかけをすると、全速力で走ったりジャンプしたりする。つまり、女らしさは生来のものではなく社会が教えるものだということが分かります。このファクトをWeb動画にすることで、女らしさに関して議論を起こさせました。

Always #LikeAGirl

この仕事ではファクトからストーリーをつくるPRパーソンのスキルと、バイラル動画でそのシーンを見せるというクリエイティブなアイデアが掛け合わされています。ファクトが映された動画は見る人に説得力を与えました。結果、女性の立場に関して議論を巻き起こす影響力のある仕事になったわけです。

ファクトから考えるPRパーソンのスキルは、クリエイティブに説得力をもたらします。

アンコントローラブルな世界と戦うPRパーソンの予測力、ファクトベースのストーリーを生み出す力、これらの能力にクリエイティビティがミックスされたら相当すごい仕事が生まれるはずだと僕は信じているんです。だから、ぜひ日本のPRパーソンにはクリエイティブになってほしい。そう思うのです。

日本のPRは特殊な環境に置かれている

もう一つ最後に。日本のPR業界はちょっとねじれた状況に置かれていました。海外では広告をつくるアドエージェンシーとPRエージェンシーはそれぞれ独立した存在です。しかし、日本では電通や博報堂といった大手広告会社にPR部門が存在し、広告会社がPR会社にPR業務を発注するケースも多かった。大型キャンペーンのプレゼンはマス広告から行われ、PRがオマケ的に位置づけられていたのも残念ながら事実です。

しかし、このことが今メリットにもなっていると思います。コミュニケーションのプランニングは統合型に向かっています。そして、PRと広告の統合がなにより求められています。我々日本のPRパーソンは統合コミュニケーションという観点からみれば、広告と競業してきたといえます。日本のPRパーソンはクリエイターと競業するのにアレルギーがありません。これはじつはPRパーソンのもう一つの強みだと僕は思っています。

PRは業務の秘匿性もあり黒子であることに美学を感じる人も多かった。しかし、カンヌやスパイクスなどでもPRのアワードがつくられている昨今、コミュニケーションの設計者としてPRパーソンは重要な役割が担えるはずです。そして、そこにクリエイティビティが加わればさらなる活躍が期待できます。ぜひ、クリエイティブジャンプを目指してください。

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Advertising Week Asia 2016
Advertising Week Asia 2016

博報堂 長谷部守彦

D2C 宝珠山 卓志

博報堂ケトル 嶋浩一郎

松田康利事務所 松田康利

ぐるなび 藤田 明久

Taro & Company 児玉太郎

TBWA\HAKUHODO 佐藤雄三

電通 頼 英夫

ツナグ 佐藤 尚之

イグナイト 笠松良彦

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博報堂 長谷部守彦

D2C 宝珠山 卓志

博報堂ケトル 嶋浩一郎

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