広告会社とコンサルティング会社は日本で競合しないのか、大手のPwCに聞いた

デジタルマーケティングが経営の重要なファクターになる時代、米国ではコンサルティング企業による広告会社(エージェンシー)買収の動きが活発化し、多くの企業が広告領域に進出している。AdverTimesでは、その動向を6回にわたってレポートする。第3回は、PwCコンサルティングの松永 エリック・匡史氏と関良樹氏に、コンサルティング会社によるエージェンシー買収と日本市場の動向について聞いた。

広告代理店を支配するつもりはない

Q.欧米ではコンサルティング会社のクリエイティブエージェンシー買収が増加しているが。

松永:PwCも米国で、2013年11月4日にクリエイティブエージェンシーのBGTパートナーズの買収を完了した。その社員数はクリエイティブ系を中心に200名程度。一方、米国内だけで、PwCのデジタル領域のコンサルタントの数は約2000名を超え、PwC全体では20万人を超えるプロフェッショナル集団になる。20万人のプロフェッショナルファームに約200名のクリエイターが加わる意味を考えてほしい。PwCはクリエイティブエージェンシーになるつもりもないし、広告代理店を支配するつもりもない。

そもそもコンサルティング会社は人月単価のビジネスモデルになっておりクリエイティブエージェンシーと比べるとフィーは高い。つまり、単純にPwCがクリエイティブ領域に参入しても価格競争力はない。

それでは、なぜクリエイティブエージェンシーを買収するのか。大事なのはクライアントに対して、さらに高い価値を提供するためにクリエイティブな機能が求められているということだ。広告業界はクライアントに対し着々と高いバリューを提供し、その情報価値は広告の枠を超えてきている。マーケティングや戦略に対するニーズの高まりは広告代理店がコンサルティング機能を持とうとしていることからも分かるだろう。一方、ビジネスコンサルタントの視点からも、広告業界がもつ高い価値の情報を戦略に活用する動きは活発になってきており、両者が手を組むことでクライアントへのさらなる貢献が期待されるわけだ。

PwCコンサルティング ハイテク・通信・メディア事業部 パートナー 松永 エリック・匡史氏
元プロミュージシャン(ギタリスト)という異色の経歴を持ち、メディア&エンタテインメント業界に特化したビジネスコンサルタントのパイオニア。「自分自身がクリエイティブの立場で活躍したアーティストであり、メディア&エンタメ業界のビジネスコンサルティングをリードしてきた。そんな一風変わったコンサルタントの元に集まった精鋭からなるチームメンバー一人一人が差別化の源泉です」と話す。

ただし、両者には文化や考え方、仕事の仕方等の違いがありコミュニケーションが難しい。両者がチームとして機能するには双方のプロトコル変換をする機能が必要になってくる。例えばコンサルティング業界と広告業界は同じような言葉を使っていても、その定義が全く異なり、会話がかみ合わないことが多い。私自身、例えば「戦略」「マーケティング」「PDCA」といった言葉で広告業界との定義の違いを感じることが多くある。そういったギャップを埋める機能として、買収したBGTパートナーズは大きく機能している側面がある。

もうひとつクリエイティブエージェンシーとしてBGTパートナーズのPwCでの役割として、既存の伝統的な戦略策定の考え方に加え、ユーザを中心としたデザイン思考ベースの戦略策定をクライアントに提供することだ。PwCにはデジタルマーケティング志向の戦略をクライアントと共に創造する「エクスぺリエンスセンター」がある。このセンターではクライアントと共にクリエイティブシンキングのワークショップを行うなどし、デザイン思考ベースの経営戦略の立案、イノベーションを起こすようなデジタル変革の戦略策定の支援をしているのだが、ここでもBGTパートナーズ出身のクリエイターたちはクライアントと協同で戦略を策定するプロセスにおいて大活躍している。

次ページ 「日本の市場において、広告会社と競合することはないのか。」へ続く

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『宣伝会議』編集部
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