情報を売るのはやめよう
長谷川:原価0の仕事が無料化していくなかで、仲山さんはどうやって「お金を払ってでもこの人にお願いしたい」と思えるような価値をつくっているんですか?
仲山:僕の仕事は、お金を払って学びに来てくれる方々に「元がとれた」とか「来てよかった」と思ってもらえたら成功なんです。そのための切り口はいくつかあります。
僕は、楽天大学を立ち上げる時に決めたことがふたつあります。ひとつは、情報を売るのはやめようということです。
長谷川:学ぶ場所なのに、情報を売らないんですか。
仲山:そう。いかにも「ネットで売上を伸ばす方法」みたいな情報を売ってそうじゃないですか。でも違うんです。
僕が楽天大学の立ち上げを任されたのが、入社半年のとき。それは楽天市場が始まって2年経った頃でした。つまり楽天大学に来る出店者さんたちは、僕より楽天市場のことを知っている先輩です。その人たちに単なるハウツー情報を売ったら、「もう知ってるよ」とがっかりされてしまう可能性が高いわけです。
じゃあ、何を売るのか?
僕たちは、「考え方のフレームワーク」を売ることにしたんです。「なぜ人はものを買うのか」「良いサービスとは何か」といった、商売の視点を体系化しました。そうすると、それを元に今までの自分の商売経験を振り返ることができるんです。なので、ベテランの店長さんほど「頭が整理できて良かった」「自分がやっていることを言語化してくれてありがとう」などと喜んでくれます。
長谷川:なるほど〜。
仲山:もうひとつは、「横のつながり」をつくることです。ネットショップの店長業は、社内に理解者がいない「孤独な闘い」なので、同じ立場の人たちとつながれる機会をつくると喜ばれます。実際、そこで仲良くなった店長さん同士で付き合いが続いて、お互いに刺激し合って大きく成長していくケースは山ほどあります。
楽天大学は、大々的に「横のつながりがつくれます」と謳っているわけではありませんが、「そういえば、あの友人と知り合ったのは楽天大学だった」というようなキッカケになれば、長い目で見て「行ってよかった」と思ってもらうことにつながります。
だから、いま自分が提供している価値は、「考え方のフレームワーク」と「横のつながり」です。おかげさまで、なぜかまわりに「良い意味で突き抜けている人」が多いので、仲山の企画に参加すると面白い縁ができる、と思ってもらえているようです。