広告主の相談相手は広告会社かコンサル会社か?
前回のコラムでは、クチコミやオウンドメディアが従来の広告と本質的には異なる存在なので、単純に広告の代わりを期待するのは間違いではないかという話をご紹介しました。
今回のコラムでは少し寄り道して、最近アドタイでも話題の「コンサル会社による広告会社の買収」のトレンドについて、聞かれることが増えたので、こちらでも個人的な考えを書いておきたいと思います。
米国におけるコンサル会社による広告領域への進出の傾向は、宣伝会議に掲載された織田さんのレポートを見れば火を見るより明らかです。なにしろ、AdAgeのデジタルエージェンシーの売り上げランキングでは、2012年には5位にIBMがランクインするだけだったのが、2年後の2014年にはトップ3をIBM、デロイト、アクセンチュアのコンサル会社3社で占めてしまっているわけです。
■相次ぐコンサルティング会社による広告会社買収、米国の動向まとめ
もちろん、このランクアップは買収による効果が中心ではありますし、実際の売上に何が含まれるかでこのランキングも大きく変わる面はあると思いますが、非常に象徴的なトレンドと言えるでしょう。
で、当然こうなると日本でも注目されるのが、日本でも同じことがおきて、広告会社とコンサル会社が競合することになるのか?という話題でしょう。タイムリーに、アクセンチュアによるIMJへの出資がニュースになったことで、この話題は明確に海の向こうの話ではなく日本にも関係ある話題になった印象です。
今月の「宣伝会議」では、この問いを各コンサル会社に投げかけていますが、インタビューされた各コンサル会社の代表の方々の発言を見る限り、広告会社とコンサル会社は得意とする領域が異なるので、競合よりは協働することの方が多いのではないかという見方が主流のようです。
■REPORT:相次ぐコンサルティング会社のエージェンシー買収、日本市場の動向を探る
米国と日本では両者の立ち位置や規模、事業ドメインが異なりますから、この見方はある面では正しいと思います。ただ、これらの発言をみて「日本では広告会社とコンサル会社は競合しないのか」と鵜呑みにしている人がおられるとしたらそれは少し間違いだとも思います。
ここで真に問うべき問いは「日本の広告主のマーケティングの相談相手になる企業はどこか?」というものでしょう。
従来、一般的には戦略系コンサル会社はトップマネジメントの経営戦略の相談相手であり、IT系コンサル会社はSAPのような統合基幹業務システムに代表されるIT戦略の立案やシステム導入、業務改善などを主戦場としてきました。主な窓口は経営企画部やシステム部が中心だったと思います。
一方で、日本でいわゆる総合広告代理店と呼ばれるような広告会社は、文字通り広告やキャンペーンを主戦場としてきました。当然、窓口は宣伝部やマーケティング部が中心です。マスマーケティング時代は、マーケティング活動は主にマス広告を中心に展開されてきましたから、広告領域はあくまで広告会社の牙城であり、コンサル会社が関わることは少なかったはずです。
戦略コンサル会社やITコンサル会社がトップダウンで大きな戦略の絵を描いたとしても、現場でそれに応じたコミュニケーション施策を実施するのは宣伝部や広告会社であり、コンサル会社は、絵は描けるけど実行ができないというのが、よく大手企業の現場でやり玉に挙がる構造があったと思います。
それがデジタル時代によって境界線が曖昧になったことで、コンサル会社と広告会社の棲み分けの時代が終わろうとしていると感じます。