ネットに情報が溢れているからこそ、直接「会う」ことに価値がある

まだ2年。長期的な視点に立って考えている。

藤崎:次に社内の説得について教えてください。アンバサダー・プログラムは顧客と一緒におこなう活動ですが、まだ新しい試みですので、社内の承認を得るのは苦労したのではないでしょうか。

愛澤:今のご質問に対しては、期待外れな答えになってしまいますが、実は特に大きな障害はありませんでした。

逆に、ロイヤルカナンが掲げるビジョンや、目指すゴールに合致するのであれば、ぜひとも試すべきだということになり、当初から前向きに取り組めたことを記憶しています。

藤崎:それは驚きました。ファンとのリレーションの大切さは理解されつつも、なかなか承認されないというのはよく聞く話です。

愛澤:私たちロイヤルカナンは、アンバサダー・プログラムに限らず、すべてにおいて「犬と猫の健康」に貢献するにはどうしたらいいのか、という価値観が重視されます。今回の活動もロイヤルカナンの価値観に基づく一つのアクションと捉えていますので、反対する理由は存在しないのです。

藤崎実(アジャイルメディア・ネットワーク/クリエイティブディレクター)

藤崎:企業のミッションがはっきりしていて、ブランドのポリシーと施策の意義が合致しているんですね。理想のアンバサダー・プログラムかも知れません。具体的にはどのようなことをしているんですか?

愛澤:取り組みの頻度はまだまだ限られておりますが、アンバサダーの皆さまに直接お会いする形式の限定イベントを開催しています。主にイベントの中では、犬と猫の健康に関しての悩み・疑問・ご不安な思いをお持ちのお客様の気持ちに応える栄養学的知識や、私たちロイヤルカナンの取り組みや考え方などについてお伝えさせていただいています。

そしてお伝えした内容の中で犬と猫の健康に役立ったことや新しく発見したことなどを、アンバサダーの方にSNSなどで率直なご感想と共に情報発信していただいています。SNSを通じて発信された率直な声がその他のペットオーナーへ広く伝わり、最終的には一頭でも多くの犬と猫の健康に役立てていただくことを願っているのです。

その他にも、ロイヤルカナンがこだわりを尽くしたフードをお試しいただくなど、単に犬と猫の健康に関する知識だけを得ていただくだけではなく、体験を通じた理解を皆さまにしていただいています。

藤崎:先ほど「ネットに情報が溢れているから、企業から正しい情報を直接伝えることが大切」というお話がありましたが、そのひとつが、フェイストゥフェイス、ということなんですね。

愛澤:はい、そうです。もちろん私たちはペットフードを介してお客様とつながっているわけですが、直接お会いすることも重要だと考えます。アンバサダーの皆さまのお話は参考になることばかりですので、私たちは大いに刺激を受けています。

藤崎:なるほど、それは素晴らしいですね。さらにはユーザーと企業の交流の場にもなっているということですが。

愛澤:フードへのこだわりや背景を知っていただけることに加えて、直接お会いすることでわかっていただけることは実に多いです。例えばロイヤルカナンでは、どのような社員が働いているのか、どのような姿勢、情熱を持って仕事をしているのか、などです。イベントが終わったあと、企業姿勢が理解できて良かったです、などのお言葉をいただけるのは本当にうれしいことですね。

藤崎:「企業を知るには、働く人を知ればいい」、と言われますが、確かもそれも従来のマスマーケティングでは不可能ですよね。

愛澤:簡単なことではないかもしれません。

藤崎:ペットフードは、いわば愛情産業なので、ユーザーと企業の間でどれだけ共通言語を持てるのか、ということだと思いました。

愛澤:共通言語を持てるか、共感をいただけるかというのは本当に大切なことですね。ロイヤルカナンの犬と猫の健康を第一に考えるビジョンをぜひ、アンバサダーの方と一緒に実現したいです。

藤崎:犬と猫を愛する企業やその社員と実際に触れ合うことで、ユーザーも感じることが多いと思います。ペットはいわば自分の家族のひとりですからね。そう考えると、心から安心できる企業とおつきあいしたいのというのは、よくわかりますよね。

今回のポイント

  • 企業理念の実現が最優先。そのために何ができるかを考えた
  • ネット時代だからこそ、ユーザーと直接、対話・対面することが大切
  • ファンマーケティングは、長期的な視点が重要
  • アンバサダーは今後のビジョンを一緒に実現するパートナー

今回のまとめ

ロイヤルカナンが掲げる「犬と猫の健康」という大目標に向かって、企業とユーザーが一緒に取り組む。それがロイヤルカナンのアンバサダー・プログラムです。大きな理念を共有することで、企業とのエンゲージメントや、ユーザー同士の連体感も生まれます。
 ネットに情報が溢れているからこそ、企業としてユーザーと直接、対話・対面することが重要という指摘に、はっとした方も多いのではないでしょうか。まさにその通りですよね。(アジャイルメディア・ネットワーク 藤崎実)


今日は、理念&施策編でした。明日は成果編をお届けします。

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藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

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