2016年、新たに加わった「怒らせないCM」という制限
では日清に限らず、企業は、これからはどうすればいいのか?
それは、怒りの導火線に火をつけないことだ。そのための防衛策は、誰が見ても反感を買わないことを考えることだ。放送前に、いろんな世代の人にチェックをしてもらうことだ。「つまらなくならないか?」とも思うのだが、常にボクらクリエイターは「制限」の中でいろんなことを考えている。それが進化だ。
この2016年。新たに制限が加わった。
それは「怒らせないCM」だ。
企業側も独自の視点だけではむずかしい時代へと突入しているといえよう。冒頭、日本アンガーマネージメント協会の安藤代表理事が、普段から怒りを抱えている人がいると指摘するように、炎上の導火線はそこら中にあるのだ。
ちょっとでも気に入らなければ、連鎖爆発を起こす爆弾の導火線が、そこら中にあるのだ。そして、人の意見を聞いていると、「確かにそうだ」「それはおかしい」「不謹慎だ」と加速度的に炎上をしてゆくのだ。
だから、「火気厳禁」の様な状態になっている。
不謹慎とか反感を買うことには、当面チャレンジしないほうが無難だ。昨年、やはりある映像を試写で見て、意見を求められた。悩んだが、もしもの対策を考えて、それで公にした。大丈夫だった。対策の一つに「最悪の場合、放送を中止し謝罪すべきである」とレポートを書いた。
いつの間にか不謹慎が許されない時代になってしまった。非常に残念だ。
ボクは子どもの頃からビートたけしさんが大好きだ。「赤信号皆で渡れば怖くない」「バカヤロウ」「冗談じゃないよ」というのを学校でも真似していた。コマネチも大好きだ。日本テレビの『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家になったのだが、その時も不謹慎な企画を山のようにやらせてもらった。
そう、時代が笑って許してくれたのだ。
ボク的には、今回のCMは、ビートたけしさんだし、「やられた!」という感じがあったのだが、そういう感覚がすでに今の時代からしてみると危険なのだろう。
だから、ボク自身も様々な企画に携わる上で注意が必要だと肝に銘じた。
「もしかして炎上するかも」と思ったら企画を取り下げる必要があるかもしれない。
日刊スポーツの報道によると、今回のCM騒動で結果的には、新製品の売上は上々だという。CMはお蔵入りになったのだが、結果オーライといえるのだろうか?
「いまだ!バカやろう!」という企画で炎上したけど、結果的に売上で成功したのは日清食品かもしれない。味の勝利だったのだろう。きっと。
「赤信号皆で渡れば怖くない」という時代ではない。やはり赤信号は止まるべきだ。と今回の件は教えてくれた。
とはいえ、かの被災地ではカップヌードルが大活躍しているに違いない。何時でもどこでも美味しいものを食べられるというのは、本当に素晴らしいことだと思う。
カップヌードルの次のCMに、ぜひ期待したい。