AbemaTVはテレビだけどLINE LIVEはテレビじゃないのは、どうして?という話

【前回】「テレビはもはや「次に何が起こるかワクワクして見るもの」ではなくなっている」はこちら

同じスマホ向け映像配信なのにどうして?

このタイトルは、まあちょっと強引と言うか、テレビという言葉の定義が曖昧なところをもてあそんでいるわけですが。でもAbemaTVは、言葉の最後にTVとつくからテレビなんでしょ?という単純な話ではありません。

今回の記事は前回の続きです。前回は、こちらです、ちょっと斜めにでもいいので読み返してもらうといいと思います。

【前回記事】テレビはもはや「次に何が起こるかワクワクして見るもの」ではなくなっている。

簡単に要約すると、テレビはずっと欽ちゃんが発見した「何かが起こりそう」だから見る、その原理で作られてきたけど、スマホの登場でその原理はひっくり返った。だからこれまでのテレビ的なものを目指しているらしいAbemaTVやフジテレビの昼間の15時間連続ライブ編成は不安だ、ということを書きました。

そして前回の記事の中で少しだけLINE LIVEにふれ、これはライブ配信で、放送とは違うみたいですよ、と書きました。放送とライブ配信は何が違うのか、それは次回にと書いちゃったので、今回はそこんとこはっきりさせたいと思います。

放送は、電波を使って受信機に番組を送信する仕組みです。だからエリアに対して行うものです。各テレビ局は、自分の与えられた地域に電波を送り届ける必要があるので、電波塔を使います。あちこちに自分で立てたりもします。

それから放送は、かなり長時間番組を送り続けます。いま地上波局はほぼ24時間放送していますね。24時間じゃなくても、朝7時から深夜12時まで、でもいいんですけど(昔の地上波はそうでした)とにかく毎日一定の時間は放送するものです。

ではライブ配信はどんなものでしょうか。LINE LIVEに限らず、Ustreamでもニコ生でもだいたい同じだと思います。まず電波ではなく通信を使います。だからエリア性は関係ありません。仕様によって国の制限はあるでしょうけど、放送のように地域に向けたものではない。強いて言えば、“特定の集団・コミュニティ”に向けたものですね。

そして、ライブ配信は「X時からY時まで」という限定された時間で行います。ここが決定的に違う。限られた時間で映像を配信する。つまり、ネット上のイベントですね。「さあ○○○やるよー!」と人を集めて何かやって、終わったら解散。これがライブ配信です。ツイキャスでは普通の高校生たちがだらだらしゃべるだけのものが多くイベント性は薄いけれども、ずーっとはやっていません。時間が限定されているのがライブ配信。

少しでもわかりやすいようにと、図にしてみました。ね、こう比べるとまったく違うでしょう?

実は先日LINE LIVEの方たちに取材しました。その内容は私のマガジンMediaBorderで記事にしてあります。

彼らとしては、ライブ配信の中でも分類があり、LINE LIVEはまた違うのだということだそうです。最重要コメントを抜き出しますと、中心になっているLINE 執行役員・エンタテイメント事業部の佐々木大輔氏はこんなことをおっしゃってたんですね。

「メッセンジャーが動画サービスをやるのは似ているようで違うつもりなんです。検索サービスが動画サービスを持つのがYouTubeだとすればツイキャスやPeriscope、FacebookLiveはSNSのタイムラインに動画開始が流れてくる。検索より自然に出会う機会がありますよね。でもLINE LIVEは、探してもないのに開始の通知が来るんです。」

ライブ配信の中でも、LINE LIVEはまたオリジナリティがあるのだと、なぜならばメッセンジャーサービスの動画配信だからだと、そういうことを力強く言っています。面白いでしょ?

だから彼らにとっては、テレビと似ているかどうかとか、ましてやテレビの座を奪っちゃおうとか、考えてもいないしそういうことではないわけです。LINEというメッセンジャーサービスのユーザーにとって、映像が役に立つみたいだからやってみよう。そういう考え方なんですね。

一方、AbemaTVはというと、LINE LIVEともライブ配信ともまったくちがう。ちょうど4月11日から本格スタートしていますが、見ていてもやっぱりちがう。何が違うかと言うと、明らかに放送なんです。

次ページ 「AbemaTVが「放送」なのはなぜか?」へ続く

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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