AbemaTVはテレビだけどLINE LIVEはテレビじゃないのは、どうして?という話

AbemaTVが「放送」なのはなぜか?

さっきの分類で、「放送は電波」と定義したのに何を言うのか、という感じですが、AbemaTVは誰がどう見ても放送です。通信を使って放送と同じことをやろうとしている。そこがAbemaTVの独自性であり、目指すところなのだと思います。

電波ではなく通信。けれどもイベント的ではなく、ずーっと番組を次から次に送り出しています。それが24チャンネルもあるんです。ミニ多チャンネル放送。それを通信で運営しているのがAbemaTV。

内容も、テレビです。AbemaNews、AbemaSpecialなど目玉のチャンネルはテレビ朝日の制作陣がつくっていますし、テレビに出てくるタレントが出てきます。テレビをスマホで見ている感覚ですね。

スタート2週目も、私は面白く見ています。毎日20時からAbemaPrimeという2時間の番組があり、私にはしっくりくる内容です。ゆるい報道ステーションみたいな感じ。一方で、地上波では言えないこと、できないことに挑んでいる。

そして、テレビ朝日の放送とリンク感があります。これもテレビになじんでいる身からすると、悪くないんです。11日には、『報ステ』開始直前に、その日がキャスター初出動の富川祐太氏が『AbemaPrime』に出てきました。この“テレビとのクロス感”は、ライブ性が高まっていいなあと思いました。楽屋からステージに上がっていく姿を見守る感覚でした。

『AbemaPrime』は視聴者もたくさん見ています。画面に視聴者数が出てくるんですけど、20万を越えることもあります。これは私が想像したよりずっと多い。テレビとのクロス感は視聴者数も得られるんじゃないでしょうか。AbemaTVはスマホのテレビ局ですが、テレビとつながっている感覚が良い気がします。メジャー感が出ますね。

AbemaTVはUIもいいです。チャンネルを“ザッピング”感覚で次々めくることができます。めくったらすぐに映像が流れ出す。きっと大変な技術ではないかと思います。使っていてストレスがないのは、大事です。

と、ここまでかなりほめました。AbemaTV、心配したけど悪くないんでね?そんな記事で、素直な感想なんですが、ただそれでもなお、うーんだけどなー、と言いたくなる。ツッコミたくなるんです、AbemaTVは。

というのは、やはり前回書いた、「放送はいまのメディア接触のスタイルに合っていない」ということなんです。前回の記事に出てくる加藤薫さんのスライドをもう一回見てください。「自分でスピードを調整して情報環境を最適化したい」こう言われると、まさしく自分もそれやってる!と思うでしょう?いま見たいと思ったものをいま見ないと次の瞬間には見る気をなくしてしまうんです。

自分にとって強い興味がない限り、時間通りに番組を見るのは難しい。かなりの時間をかけて“習慣化”させないと無理。日曜8時に『世界の果てまでイッテQ』を見ることは多くの人びとの習慣になりましたが、それまで何年かけてきたことか。

あるいは、いま地上波放送でさえ明らかに視聴率が減っていてフジテレビなんか昨年度前期に赤字になっちゃった。それなのにいま“放送”をはじめてビジネスとしてうまくいくの?論理的におかしくね?と思ってしまいます。いまAbemaNewsなどテレビ朝日が制作しているらしい番組は出演者も含めてかなり予算をかけている節がある。それ、続くのかなあ、と心配になってしまいます。

ついでに突っ込むと、AmebaFRESHはAbemaTVに吸収されてAbemaTV FRESHになっちゃいましたがそれ意味わかんないんですけどとか、そもそもAbemaとAmebaって見分けつかなくて頭混乱するんですけどとか、とにかくツッコミどころ満載です。

でもそういうところも含めて、AbemaTVは面白いです。ネットエージェンシー大手と、視聴率好調の民放キー局が組んで繰り広げる壮大なメディアの実験。まずは小さく始めてみて、とかチンケなこと言わないで最初から鳴り物入りでドーン!とやらかしてる感じが面白い。

ということで、いまAbemaTVへの取材もお願いしているので、次回はそれ、お届けできるでしょう。乞うご期待!

追記:最新情報ではAbemaTVはスタート好調だそうです。私が心配なんかする必要ないですね!
http://gamebiz.jp/?p=160409

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Borer 」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。株式会社エム・データ顧問研究員としても活動中。お問合せや最新情報などはこちら

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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