「東京2020大会エンブレム」が、ついに決まった。2015年9月の旧エンブレムの白紙撤回後、同月末にしきり直し、以降7カ月間あまりを費やしての決定。1万4599件もの膨大な数のエンブレムを公募し、選定には国民からの意見約11万件も参考にするという、前例のない決定プロセスへも視線が注がれた。
エンブレムに選ばれた「組市松紋」の作者は、東京都の野老朝雄(ところ・あさお)さん(46)。建築畑出身のデザイナーで、これまで大名古屋ビルヂングのファサード・ガラスパターン(2015)や、工学院大学125周年記念総合教育棟のファサードパターン(2012)、SEIYUのプロトタイプ設計(2013)などを手がけた人物だ。
4月25日の発表会時点では、「競技場内のサインや、そのほかの屋外掲示物など、エンブレムを用いた具体的な制作に携わるかどうかは未定」(東京五輪大会組織委員会)との回答があった。
一方で本人からは、「2020年までには街中に、より多くのデジタルサイネージが登場するはず。藍色のエンブレムだが、サイネージによって何億通りものカラーリングで街を彩るのも、展開としては面白い」との話が出た。建築出身らしく、「上空から見たらエンブレムの形になる構造物なども考えられ得る」といったアイデアも飛び出した。
オリンピックエンブレムも、パラリンピックエンブレムも、3つの異なる四角形を45点用い、組み替えることで、各エンブレムの形状をなしている。幾何学的なデザインであることを生かせば、動的なビジュアルにして、インタラクティブな表現にすることもできるのかもしれない。
あまりに、決定に人手や時間を要した「東京2020大会」エンブレムだが、エンブレムを決めること自体はゴールではない。これから、さまざまな制作物にその身を転じ、街頭ポスターやサイネージ、ディスプレイなどで披露されるはずだ。2020年東京オリンピック・パラリンピックの成功への旗印として、いよいよ、その役目を果たすことを願いたい。
※本テーマにて、6月1日発売の月刊「販促会議」7月号で緊急特集を実施します。