広報の視点から、国民との「合意形成」に手を尽くした新エンブレムを考える ――月刊「広報会議」編集長 森下郁恵

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2015年9月の五輪エンブレム使用中止から、約8カ月が経過した。この8カ月の成果は、「組市松紋」という新たなエンブレムだけではない。決定までの国民との合意形成の「プロセス」こそ、最も重要であったといえる。合意形成はPR(Public Relations)の基本だからだ。

すべての組織体のコミュニケーションは今、社内に向けた「インナーブランディング」、社外に向けた「アウターブランディング」の両立が重要だと言われている。オリンピックという国民的行事も同様で、メディアや海外向けの発信だけでなく国民(インナー)とのコミュニケーションのプロセスを大事にしなければならなかった。

対外的な発信ばかりに重きを置いたコミュニケーションは、組織の内部から不満が漏れやすい。ソーシャルメディア上で社員の告発が相次ぐのも、その象徴的な動きといえる。同様に、国民から多大なる不満が噴出し、ソーシャルメディア上を駆け巡ったのが旧エンブレム決定後の一連の騒動だろう。

とりわけ「インナーブランディング」は一定の時間がかかり、しかも分かりやすい効果が出にくい、難しいコミュニケーションでもある。『広報会議』の読者である、広報パーソンも非常に悩んでいる。

ただひとつ言えるのは、どんなに組織が八方手を尽くしても、不満がゼロになることはない。説明責任を尽くし、コミュニケーションのプロセスを大事にする。これこそ、あらゆる組織体において求められているのではないだろうか。

※本テーマにて、6月1日発売の月刊「広報会議」7月号で緊急特集を実施します。

宣伝会議 東京オリンピック・パラリンピック エンブレム特集
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