まずは「縦割り組織」の壁をぶち壊すところから始めよう。

課題を乗り越えるための組織とは

例えば、従来多くのメーカーでは、顧客とのコミュニケーションをしているのはお客様サポートセンターのようなコールセンターが中心のケースが多いはずです。ただ、例えば、顧客とのコミュニケーションに注力することで顧客の口コミが宣伝効果をもたらすことを期待して、アンバサダープログラムを始めようと思ったら、はたしてこのプログラムはどこの部署の仕事でしょうか?サポート部でしょうか?宣伝部でしょうか?

もちろんその正解は、サイロ型の組織名称には存在しません。

仮に、宣伝部の担当者がアンバサダープログラムを始めたとします。プログラムに参加しているアンバサダーは、通常の顧客でもありますから、当然アンバサダープログラム側の窓口に通常はサポート窓口にするような質問をしてくるかもしれません。1件2件であれば、宣伝部の担当者でも対応できるかもしれませんが、ネスカフェアンバサダーのように20万単位の人からの質問が来るようになったら、当然サポート部との連携は不可欠なはずです。

また、せっかくたくさんのアイデアやフィードバックを、アンバサダープログラムを通じて集められたとしても、その声が製品開発の担当者やサービスの担当者に届かなければ、その声が実際に反映されることはありえないことになります。当然、集まった声を該当部署に共有する仕組みも必要になるはずです。

こうした課題を乗り越えるためには、組織横断プロジェクトであったり、マトリックス型の組織であったり、様々な解決策がありますが、いずれにしても従来の縦割りの組織の意識のままでは難しいということを認識してもらうことが重要です。

くどいようですが、もう一度トリプルメディアの図を思いだして下さい。

 

ペイドメディアだけで「広告」を行っていたマスマーケティング時代は、マーケティングは全て宣伝部がやっていれば良かったかもしれません。ただ、オウンドメディアもアーンドメディアも全てを組み合わせてマーケティングを考えることが可能なデジタルマーケティング時代においては、広報部とPRエージェンシーがマーケティングを主導することも可能ですし、経営企画部とコンサル会社がマーケティングを主導することも可能です。ザッポスのようにサポートとコールセンターがマーケティングを主導することも可能な時代になっているわけです。

ワールドマーケティングサミットでも、ドン・シュルツ教授が「デジタル化の変化に合わせて当然企業の組織構造も変えなければならない。そもそも、企業の従来の組織図には顧客の存在がない。だからこそ、縦割りの組織構造に陥ってしまう。これからは、顧客を組織の中心におかなければならない」と明言されていましたが、企業はこの変化に対応するかどうかが問われていると思います。

参考:広告大量投下だけでは勝てない時代に重要な3つのテーマを、ドン・シュルツ教授の講義から考える

アンバサダープログラムのような顧客を中心に据えたコミュニケーションの可能性を感じられるのであれば、ぜひ一度既存の縦割りの組織図の常識を自分の中で破壊して、顧客を中心にしたコミュニケーションやマーケティングのあるべき姿をゼロから考え直してみてください。

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徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)
徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

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