カヤックは、「ソーシャルメディア特別講座A群」だった
長谷川:かっぴーは、カヤックに入社する前は、広告会社のデザイナーだったんですよね。カヤックに転職した時点で、独立を意識していたんですか?
かっぴー:最終面接で「面白法人カヤックの名前を借りて、面白い仕事をさせてもらいます。いずれ、“かっぴーが面白い”と名指しで仕事が来るようになったら会社を辞めます」と言っていたんです。そして、その時が来たから辞めました。最初の目標は2年だったので、半年早まりましたが。
あと、広告プランナーとして独立すると思っていたから、まさか自分が漫画で独立するとは…という感じです。
長谷川:意外な手段だったにせよ、目標が叶ったんですね。
かっぴー:ほんと、単位がとれてよかったな~という感じです。
長谷川:単位?
かっぴー:カヤックへの転職は、大学の履修科目をとりにいくようなものだったと思うんです。
僕はカヤックに勤めるまでは、ポスターやCMをつくる、いわゆるマス広告の世界で働いていました。だからソーシャルメディアのことが全然わからなかったんです。Twitterのフォロワーも少ないし。だから、次はそっちを学びたいと思ったんです。カヤックでどっぷり「ソーシャルメディア特別講座A群」を履修して、気づいたら単位をもらって卒業していた、みたいな感じです。
長谷川:かっぴーは、いきなり240単位もらって卒業認定という感じでしたね。僕もかっぴーと同じで、インターネットのほうをやってみようと思ってカヤックに入ったんですよ。ネットやソーシャルメディアをうまく使っているコピーライターってあまりいないので。
かっぴー:マスとソーシャル、両方わかっている人って本当に少ないですよね。ソーシャルを知らない人のWebの企画って、成立していないことが多い。ここをちょっとひねったらできるのに!と思うこともあります。そういうことを言う要員として、会議に呼んで欲しいなと思います。
やりたいことがたくさんある人ほど、肩書きを断定するべき
長谷川:株式会社なつやすみの事業内容は、どのような感じですか?やっぱり、メインは漫画?
かっぴー:そうですね。基本の軸として漫画連載があって、次に漫画広告やその他の広告案件がある、というという感じですね。今年中に、漫画の仕事がどこまでいけるのか見えると思うので、あとはそれ次第です。いま、雑誌の連載の話が複数件来ていて、もう少しいけるかもしれないな、と思っています。
長谷川:Webから紙媒体に、逆輸入ですね。
かっぴー:ソーシャルを経験してみて、改めて最近、やっぱりマスの力を無視できないな、と思っています。Web漫画の1位と、ジャンプでいちばん人気のない漫画だったら、たぶん後者のほうが世の中に知られているんですよ。僕らがWeb有名人の名前を挙げても、ふつうのサラリーマンは一人も知らないことだってある。
だから、シェアやフォロワーを増やす努力を続けてWebの陣地を広げても、たどり着けない領域が山ほどあると思うんです。
とはいえ、僕がこうして仕事をできるようになったのは、Webのソーシャルパワー。感度の高いアーリーアダプターたちがWebにいるから、僕の漫画も拾ってもらえたんです。
でも、その人たち以外のもっと広い人に知ってもらうには、Webに留まっていたらダメなんです。目標は「脱ソーシャル」ですね。“ソーシャルの中の蛙”にならないように。その手段として商業誌での連載があります。
長谷川:肩書きは「漫画家」ですが、漫画自体が目的なのではなく、漫画は広く人に伝えるための手段なんですね。
かっぴー:肩書きを「漫画家」にしているのは、納品物が想像できるからです。コピーライターだと、コピー。デザイナーだとデザイン。何を納品するのかわかりやすいじゃないですか。やりたいことがたくさんある人ほど、肩書きを断定するべきだと思います。