かっぴーを商材として扱うために起業した
長谷川:クリエイターでありながら、自分でプロデューサーや戦略プランナーも担っているんですね。
かっぴー:僕が会社をつくったのは、かっぴーを商材として扱いたかったからです。自分がかっぴーのエージェンシーで、かっぴーという商品の年間プロモーションをしている感じです。
もともと、かっぴーの強みはストーリーテリングなので、漫画ではなくてもいいんです。例えば、文章や脚本でもいい。今いちばん注目されているのが漫画だから、漫画を描いているんです。
クリエイターは、好きなことをやるのがいちばん。だから、かっぴーには余計なことを考えずに、好きにやらせようと思っています。そのために、道の砂利をどけて進みやすくする。こっちにいったら宝がある、崖がある、というのを教える。それを全部、自分自身でやっているんです。
長谷川:ひとりで仕事をしている人は、多かれ少なかれ、そういうセルフブランディングが必要なのかもしれないですね。
かっぴー:セルフブランディングでもないんですよ。完全に違う人だと捉えています。
些細なことでも、人に求められることは天職
長谷川:それって、自分はどんな人間なのかを徹底して客観的に考えないとできないことですよね。なにか、自分の特性に気づいた原体験があったんですか?
かっぴー:学生時代に、CMディレクターの中島信也さんに作品を見てもらう機会があったんです。そのとき、うまくまとめすぎてつまらない、器用貧乏だ、と言われたんです。
そのときの自分は、器用で何でもひと通りできるけど、突き抜けた何かはない、という感じでした。いまのように自分の人格をうまく分けられていなかったので、その中途半端な感じが悪いほうに出てしまっていたのだと思います。
「何が自分に向いているんだろう?」と考えたときに、これも信也さんの言葉なのですが「どんなに些細なことでも、人に求められることは天職だ」「友だちのなかで求められることが職能なんだ」と言っていたんですよ。例えば、飲み会で何となくいつも幹事をやっている人は、絶対に幹事に向いているはずなんですよ。だからその才能を伸ばしたほうがいいんです。
いま思えば、その頃僕は、元気のない友だちに4コマ漫画を描いて送ったりしていたんです。たった一人でしたが、それがすごくそいつにウケて。
長谷川:それがいまのかっぴーの仕事につながっているんですかね。
かっぴー:そいつにウケたことは、当時の自分にとって1000いいね!ぶんくらい嬉しかったのですが、とはいえ、一人のために描いていても、仕事としては成立しないですよね。クリエイターのかっぴーだけを野放しにしたら、きっと野垂れ死んでしまうんです。だから、かっぴーというコンテンツを育てる会社として、なつやすみがあるんです。
やっぱり僕は、根が広告だから、知らない人に評価されたいという気持ちが強いんです。そして、より広く知ってもらうために、ソーシャルとマス両方のバランスをとりながらやっていきたいと思っています。
長谷川:知らない人に評価されるためには、自分のいいところを生かせる、もう一人の自分の視点が必要なのかもしれないですね。今日はどうもありがとうございました。
今回のおさらい
「器用だけど突き抜けた何かがない人」が独立するには
・どんなに些細なことでも、人に求められることは天職
・大学の履修科目をとりにいくような感覚で、 自分が苦手だと思う分野の仕事に転職するのも手
・「クリエイターの自分」と「戦略を立てる自分」の役割を分けて考える
最後の長谷川メモ
昨年2015年8月4日にスタートした『長谷川、カヤックやめるってよ。』ですが、かっぴーにバトンを渡し、『かっぴー、カヤックやめるってよ。』という連載企画をする予定でしたが、かっぴーが予想を上回るスピードで退職したので、実現しませんでした。僕は1年間かけてやめたのに、その半分の時間で、デビューし駆け上がり独立しちゃうなんて・・・まさにWebドリーム!
最後に、この場を借りて感謝を伝えたい人たちがいます。連載に出てくださった憧れの先輩や尊敬している同世代の方々、この連載企画を考えてくださった宣伝会議の齋藤千明さん、この企画をいつものように応援してくれたカヤックの人たち、そして、つたないインタビュー内容を毎回そぎ落とすことなく凝縮してくれたゴーストライター(!?)の笠原名々子さん、本当にありがとうございました。
長谷川さんに加え、藤本宗将さん(電通)・眞鍋海里さん(BBDO J WEST)の3名を講師として、媒体、コンテンツを問わず機能し、拡散していくクリエイティブの在り方について学び、今の時代に「コピーライター」として生き残る術を考える「コピーライター養成講座拡散コース」を開講しています。
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