戦略は実行、そしてビジネス環境と切り離せない
清水勝彦氏の著書『戦略と実行』では、戦略を策定しても、その通りに実行できない企業の問題点として、「組織内のコミュニケーション」を挙げました。これは、戦略の実行レベルに課題があるという話で、戦略自体を問題としては捉えていません。
しかし、本当にそうでしょうか。
このテーマは古くから様々な場で語られてきています。昨年のコラムで紹介したボストン コンサルティング グループ(BCG)の社員による共著『戦略にこそ「戦略」が必要だ』(日本経済新聞出版社から邦訳が出ました)でも、戦略そのものではなく実行に問題が発生すると書かれています。
ここで問題として指摘されているのは、実行のフェーズを無視して戦略を選ぶことにあり、ビジネス環境に準じて相応しい戦略が実行されるべきであるということです。外的環境や前提に合わせて戦略を選ばない限り、必ず戦略と実行の間に齟齬が生じるというのです。
清水氏の著書はおそらく、BCG(ボストン コンサルティング グループ)の言う「クラシカルな戦略」を前提として、実行に移す際に生じる組織内でのコミュニケーション構造という細部についての問題提起でしかないことが分かります。
「戦略は正しかったが、うまく実行できなかったために失敗した」というのは、よく見聞きする話ですが、これは戦略と実行を切り離して考えていることが前提になっています。言い換えれば、経営と組織の問題として考えているということでもあります。
このBCGの戦略論は、企業ガバナンス上の課題を戦略タイプ別に組織、企業文化、リーダーシップ、イノベーションといった分かりやすい項目で分析し、戦略を実行するための最適な環境と陥りやすい罠を指摘しています。どんな戦略を用いるかによって、実行レベルの問題がどのように起こるのかは異なるという視点を提示しているのです。
つまり、経営者が正しい戦略を選び、組織で実行するためには、実行を戦略から切り離して別の問題として考えるのではなく、常にセットで考えるべきということです。
では、具体的にどのようにセットで考えていくべきでしょうか。