「紙」編集者の逆襲 — メールやLINEが主流の時代だからこそ「手紙」が最強

「ガケガミ」という名の技術

 
僕は藤田さんへのインタビューを終えると、サイバーエージェントを出てすぐの喫茶店に入り、藤田さんへ感謝の手紙を書き、近くのポストにいれました。インタビューを終えた30分後には、手紙を投函していたと思います。これが、紙編集者にとっては一般的な「ガケガミ」、帰りがけ(ガケ)の手紙(ガミ)という技術です。

しっかりとした人間関係を築く前に、メールやメッセンジャーで感謝の気持ちを伝えても、相手の心には何にも残らないと、僕は思います。それは流れ去るノイズと同じ。忙しく、毎日のように取材を受けている藤田さんのような方なら、尚更です。
 
みんながみんな手紙を書くならば、手紙の価値はないかもしれません。でも「非効率な手紙なんて書いてられるかよw」と笑う若者ばかりの今だからこそ、手紙を書くことで、その他大勢より少しだけ印象に残ることができるのです。

僕は幻冬舎では藤田さんの担当ではありませんが、書籍の帯コピーを書いていただいたり、トークショーに出てもらったりしました。大好きな藤田さんと何回か仕事ができたのは、手紙のおかげだと勝手に思っています。

 

いい感じの「手紙の距離感」

 
手紙は、こちらの想いを一方的に伝えるだけです。メッセンジャーやLINEのように、既読表示が出ることもありません。要は、返信を前提としない一方的なコミュニケーションなので、相手にとっても負担がありません。

手紙を送ったら最後、「返信は来なくても、きっと読んでくれているはず」と想像するしかありません。相手が「いいね!」と思っているかすら分からない。そんな心もとない距離感は、SNSで常につながっている現代だからこそ、際立ち、価値が出てきます。なんといっても、手紙は、メールやLINEなどでは考えられないくらいの文字量を必要とします。

なぜなら、便箋が1枚だけだったり、途中で終わっていたりすると、カッコ悪いからです。ギッシリと3枚書けば、1000字くらいは書くことになります。1000字の文章を書こうと思うと、手紙を出す相手と心の中でしっかりと向き合わなくてはいけません。相手への想いをはっきりと言葉にして書くというのは、やってみると思っている以上に難しいものがあります。

しかし、だからこそ、返信は来なくても、「いいね!」はつかなくても、相手の心にたしかに積み重なっていくのです。

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箕輪 厚介(編集者)
箕輪 厚介(編集者)

1985年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、沖縄県の瀬底ビーチリゾートに内定するも入社前に倒産。就職浪人を経て双葉社に入社。ギャルファッション誌『エッジ・スタイル』の広告営業として、商品開発やイベントなど幅広く仕掛ける。2013年にはネオヒルズ族とのタイアップ企画『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊。発売日に与沢翼が書類送検されるも即完売。Amazon総合ランキングで1位を獲得。2014年から編集部に異動。『サッカー批評』の副編集長をやりながら、『たった一人の熱狂』見城徹、『逆転の仕事論』堀江貴文(共にAmazonビジネス書ランキング1位)などを手掛け、2015年に幻冬舎に入社。

箕輪 厚介(編集者)

1985年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、沖縄県の瀬底ビーチリゾートに内定するも入社前に倒産。就職浪人を経て双葉社に入社。ギャルファッション誌『エッジ・スタイル』の広告営業として、商品開発やイベントなど幅広く仕掛ける。2013年にはネオヒルズ族とのタイアップ企画『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊。発売日に与沢翼が書類送検されるも即完売。Amazon総合ランキングで1位を獲得。2014年から編集部に異動。『サッカー批評』の副編集長をやりながら、『たった一人の熱狂』見城徹、『逆転の仕事論』堀江貴文(共にAmazonビジネス書ランキング1位)などを手掛け、2015年に幻冬舎に入社。

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