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テクノロジーを活用したマーケティングを行う主体、業態は拡大を続けている。スポーツマーケティングもその一つ。5月9日~12日(現地時間)まで米国・ラスベガスでMarketo(マルケト)が開催中のイベント「THE MARKETING NATION SUMMIT」に参加していた、米国のプロバスケットボールチーム「Trail Blazers」でマーケティングを担うVincent Ircandia氏に話を聞いた。
—スポーツは勝つこともあれば負けることもある。それでもファンが情熱を失わないような関係性を維持し続けるために、何が必要なのか。
私たちのビジネスは、非常にユニークだ。ファンの情熱が非常に熱く、そして扱う製品が毎日のように変わっていく。確かに、チームが勝ち続けることはないが、負けたとしてもファンはチームに関する情報を得たくないわけではない。その時々のファンの気持ちを理解し、その気持ちに沿ったコンテンツを提供できるかが、エンゲージメント構築・維持のカギとなる。試合に負けた時は、どうやってこの苦境から抜け出そうと思っているのか。次の試合に向かう姿勢を見せるなどのコンテンツ戦略が考えられる。
—コンテンツ開発はどのように進めているのか。
消費者が情報を得られるチャネルが格段に増えている現代、あらゆるチャネルで「Trail Blazers」の存在感を示すことが必要だ。そこでSNSやスナップチャットなど、新しいチャネルも積極的に取り入れている。
Webサイトのコンテンツでは、2年前から専属記者を1名雇って、選手たちの試合では見せない舞台裏まで全て取材をし、記事としてあげる取り組みをしている。スポーツチームのマーケティングにおいては「Behind the scenes」が大事で、専属記者を置いた理由は、選手たちの舞台裏を見せることで、チームに対するファンのエンゲージメントが高めることができた。
また、コンテンツを提供するタイミングも重要だ。チームの選手の8割が入れ替わっても、NBAの試合がある期間のシーズンチケットの購入客の9割が継続して購入してくれた。これは、エンゲージメントが途切れかけるサインを多様なデータを収集、分析することで発見し、アラートを鳴らして、それに対応してきたからだ。
—エンゲージメントという目標は定性的のように思える。具体的にどのような目標設定をして、マーケティング投資を決めているのか。
最終的にはチケットのセールスにどれだけ、結びついたかがマーケティングの投資効果を測る指標だ。しかし私たちは、例えば、Eメールの開封率と試合会場でのグッズ販売など、様々な顧客の行動データの関連性を統計的に導き出す取り組みもしている。これによりゴールにたどり着くまでの、重要な中間指標を設定し、日々その結果を分析してきた。
具体的にはWEBサイトのトラフィック、滞在時間、SNSでのリーチやSNSを通じてのブランド理解、ブランドとのインタラクションなどを見ている。ただ、お客さまの変化が激しい今のような時代には、中間指標も常に見直しを続ける必要がある。
—データの分析はどのように進めているのか。
5名のアナリストがチームを組んで、分析をしている。カスタマーエクスペリエンスをより統合的に捉えるためには、新しい接点にばかり意識を向けるのではなく、伝統的なチャネルも含めて考えることが必要だ。常にその時々の環境に適した統合的なカスタマーエクスペリエンスを描くようにしている。現在、私たちは32のタッチポイントのカテゴリを設定。それぞれのタッチポイントで、どんなデータを収集し、それをどんな指標で評価すべきかを設定し、それに基づいてデータの収集、顧客体験の改善に取り組んでいる。また深くお客さまを知るためには、データを持つ他社とのアライアンスも今後重要になるだろう。
10年前は数学が苦手な人がマーケティングの仕事を選んでいたと思う。しかし、今や数字、数学への理解がないと、マーケティングができない時代になっていると言える。