カスタマーの時代が到来
スコット・マッコークルCEOによる、オープニング・キーノート(基調講演)では、終始一貫して、カスタマー(顧客)の時代が到来したことを告げていた。それは、ITによって様々なマーケティングやセールス、サービス活動がデジタル化され、一見してテクノロジーが優位に立つかと錯覚するのではなく、あくまでも顧客のためのテクノロジーであることを宣言している。
こうした宣言の背景は、日常を振り返れば、容易に理解できる。不要な大量のメール、広告の垂れ流し、SNS上での節操のない宣伝活動、興味が無くなったのに何度も表示されるバナー広告などに、顧客はおろか、一生活者としても辟易としていることだろう。一方で、日本では、古くから「お客様第一」を是とする考え方が浸透してきたが、デジタル化の今日、それを時代に合った方法で、精度よく効率的に実施するための、プラットフォームとツールが必要となっているとも言える。
デジタル化が進展した現代では、適切なタイミング、場所、デバイス、表現等で、顧客が必要としているもの、満足を高めるものを提案、接触していくことが極めて肝要だ。しかしながら、リアルの世界で、親しく近しい人間関係であればそのようなことは十分に配慮されているだろうが、ことデジタルの世界では、無配慮状態であることが多数を占めている。顧客を創出し、育成するどころか、かえって顧客を遠ざけてしまっているという事態も発生していることに気づき、行動すべき時が来たということだろう。
そして、同氏が主張する「カスタマーの時代」においては、マーケティングツールは、単なるプロダクト(製品)ではなく、マーケターのアドバイザーにならなくてはならないし、マーケティング活動は、顧客に一方的に情報を教える教師ではなく、顧客のインサイトを汲んで適切な提案を行なうべきで、また顧客同士のコミュニティや顧客と自社はもちろん、多くの商品・サービスを提供する企業群とのエコシステムを構築する必要があると説く。
その上で、現代のカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)はどうやってつくっていくべきだろうか?と聴衆に問いかける。なお、セールスフォース・ドットコムは、現在、ソフトウェアカンパニーとして世界第4位、またフォーブスの最もイノベーションのある会社としても評価を受けるなど、創業以来わずか17年間で大飛躍を遂げているわけだが、その基本的な考えは、「すべてお客様に焦点を当てること」で、成功を収めてきたということも付け加えておく。
一方で、どうやってレガシーの時代から、カスタマーの時代、デジタルの時代に変わるのか?その変革は、ドラスティックに起こりうる。具体例をあげれば、アマゾンが15年前にリテール分野で破壊(的なイノベーション)を起こしたこと、最近ではUberが、交通分野で破壊(的なイノベーション)を起こしている。あらゆる機会に破壊を起こす可能性があり、日々がチャンスでもある。これらの変革は、すべてカスタマージャーニーが重要で、それは、BtoC、BtoBのどちらも該当する。