—人の気持ちをつかむポイントは、どのように見つけていますか?
嶋:インサイトを突いた企画の本質は、「実はあなたが欲しかったのはこれ」と、示せるかどうか。本人が気づいていない欲望のボタンが押せるかどうか。それができるとホントに人が動きます。そして、人って、自分が気づいていなかった欲望に気づかされると感謝するんです。
たとえばル・クルーゼの鍋は、雑誌「MART」が取り上げたことでヒットしたわけですが、誌面で「台所の素敵なインテリア」って紹介されました。「実は、主婦のみなさんは、台所に素敵なデザイングッズが欲しかったでしょ」というインサイトを、先回りして発見したわけです。お鍋を作っている鋳物職人のみなさんが、「日本のインテリアをつくろう」と思っていたわけではありませんし、「おいしい煮込み料理ができる鍋」として紹介していたら、ル・クルーゼはこんなに大ヒットしたでしょうか? 主婦の本音をとらえたから、ヒットしたのではないかと思います。
石田:そうですね。「商品やブランドについてこう思っていたけど、実はそうじゃなかった」、そんなふうに気づかせてくれる企画は、突破力があります。
嶋:海外の広告賞でもパーセプションチェンジ(認識の変化)ができている企画は評価されています。
藤井:インサイトを見つけるのは簡単なことではありませんが、結局は自分に問うしかないなあ、と思います。自分がその企画に対して、楽しいか、心躍るかどうか、いつも自問自答しています。
嶋:OLがターゲットだけれど、OLでもなんでもない自分ですらやりたくなるかどうか、という感覚はすごく大事。そういう企画はリアリティがあります。
奧谷:それに、お客さんのインサイトをつかむことができたのかなと思う企画は、実施してもう一度やっても良いと自信が持てますよね。
—応募者の皆さまへメッセージをお願いします。
石田:いいアイデアは、楽しみながら考えているところに降りてくると思います。どれだけ真剣に課題と向き合い、そして楽しめるか。いい企画をお待ちしています。
藤井:例えば、行列できたらどうする? 売り切れたら? といった細かなことは、全部企画書に書く必要はありませんが、リアルに考えているかどうかは、企画書を見るとわかります。お客さんに幸せな体験をしてもらうことは、企業にとっても幸せなこと。そんな企画書を楽しみにしています。
嶋:いい企画書は、いちいち説明しなくても、「あ、できそう」と読み手に思わせることができます。フィジビリティもきちんとチェックした素敵なアイデアをお待ちしています。
奧谷:何かに気づかせてもらえる企画、ちょっと限界を越えるということもポイントかと思います。みなさんの面白いアイデアを早く見たいと思ってワクワクしています。