AbemaTVはネットがつくったテレビで、そしてテレビから分裂したメタテレビだ

AbemaTVで視聴習慣をつくっていきたい

「インターネットは黎明期からアングラ感も漂うし、マイナーだしデザインもスタイリッシュではないし、メジャーではないものでした。我々もメディアを作るんだと、メールマガジンだブログだとやってきましたが、これでメディアと呼べるのかというマイナー感があって。そこをどこかで変えたいなと思ってたんです。それが今回のAbemaTVにつながってます。」

サイバーエージェント社はこれまでもメディアの立ち上げをやってきている。その経験から“メジャーじゃないとメディアといえないのでは?”との思いを持ったということでしょう。だからAbemaTVはテレビ局とやったし、メジャー感も大切だった。

AbemaTVは藤田氏のコンセプトをテレビ朝日の力で具現化したメディアです。だからネットの人が作ったテレビ。だからこそ、メジャー感が大切だったのでしょう。

AbemaTVは、テレビでなければならなかったという話で、メジャー感とは別にもうひとつポイントがあります。テレビだから、放送でなければならない。私が疑問だったのはここです。放送は時代にあわなくなってきているはずなのに、なぜいま放送なのか。これについても藤田氏の明確な考え方があったのでした。

「これまでに、アメスタという子会社でオリジナルの番組を配信していまして。タレントベースで人が集まるんですけど、そのあとは”解散”するだけなんで、意味ないんですよ。滞留しないと意味がない。みんなすぐキラーコンテンツって言うんですけど、そのあとに「視聴習慣」をつくっていかないといけないんです。」

滞留しないといけない。だから放送である必要があった。なるほど!と思いました。メディアを目指す、とはそういうことなのだと思います。単発で映像を配信するたびに人を集めて、でもすぐ解散されちゃうんだったら、ずっと配信してたほうがいい。そうしなきゃメディアになれない。そういう考え方でしょう。

サイバーエージェントというネット広告代理店で、広告ビジネスをやって来て、なおかつメディアを立ち上げることにも取り組んできた藤田氏だからこその、バックグラウンドがはっきりある熱い言葉だったと思います。

もうひとつ、広告業界のメディアAdverTimes読者にとって重要だと思われる部分があります。広告メディアとしてのAbemaTVについて聞いたら、こんなことを言ってました。

「ターゲティングを細かくするつもりはないです。もちろんどの時間帯はどういう層が見るといった、大きなターゲット設定はやりますよ。でも特定の人に特定の広告を出すのはやらない方針です。効果は下がると思うので。」

「関係ない人に商品を訴求できるのもマスメディアの価値です。ネットはすぐにターゲティングの話になりがちですが、そこには耳を貸さないでいたいです。絞り込むと数字も小さくなっちゃう。これこれこういう人を千人絞り込みました、といってそう言う人たちにテレビCMみたいなのを打ってもしょうがないですから。」

どうでしょう?ターゲティングには耳を貸さない。ネットメディアとしては逆行しているようにも見えます。

でもこれも、いままでさんざんメディアづくりに携わってきたからこそ、なのでしょう。こういうところもテレビをめざす理由だと思います。マスメディアであることで、価値を下げずに運営できるはずだとの考えでしょうし、いままでのテレビはそれができていたわけです。

次ページ 「10代20代にとってのAbemaTVとは」へ続く

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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