なぜ、統合の起点はカスタマージャーニーでなければならないのか?
お客さんとの複数の接点をつなぎ、最適なメッセージ、施策を出し分ける戦略。近年は、顧客視点で、一人ひとりのカスタマージャーニーに合わせたきめ細かな接点設計が志向されている。
IMCとは、統合マーケティングコミュニケーション(Integrated Marketing Communications)のこと。お客さんとの接点において、メッセージとメディアを複合的に用いるアプローチのことで、「タッチポイントプランニング」なんて言い方もされますよね。
ただ、「統合」の意味も年々進化しており、特に2000年代以降の「統合」と、それ以前の「統合」とは少し意味が違います。そこに注目しながら、歴史を見ていきましょう。
メディアミックス
単一メッセージを複数のメディアに乗せる広告戦略。それぞれのメディアの媒体特性を生かしながら、認知を拡大させて購買に結びつける、あるいはムーブメントをつくっていくこと。映画やアニメなどエンターテインメント業界でもよく使われる手法です。
IMC
1998年、ノースウェスタン大学のシュルツ教授らが提唱。製品戦略、価格戦略、流通戦略も含めたビジネスプロセス全体をコミュニケーション視点で統合的に設計すべきだという考え方。これによって「統合」は新しいフェーズに突入します。
パーチェスファネル
お客さんが最初に商品を認知したときから、購買に至るまでの意識の変遷とお客さんの人数を「ファネル=漏斗(ろうと)」の形で表現した統合モデル。認知獲得時、比較検討時、購買決定時など、それぞれの接点ごとに最適なメッセージは異なるという考え方です。
カスタマージャーニー
お客さんがブランドとどのように接点を持ち、どんな経験をするか。一人ひとりの行動、思考、意識のプロセスを「旅」にたとえた概念。購買プロセスの途中にあるタッチポイントでどのような体験をし、どのような心理的変化を起こすのかをマップで可視化します。その作り方は書籍の方をご参照ください。
送り手主導から、受け手(顧客)主導へ。マス向けメディアの統合でなく、ひとりひとりに寄り添う接点の統合へ。この流れの中で「カスタマージャーニー」が統合論の中心に踊り出たわけですが、そもそもこうした考え方は昔ならアイデアがあっても、実現しなかったアプローチです。テクノロジーの発達によって一人一人の行動理解が可能になり、一人一人に広告表現の出し分けもできるようになったからこそリアリティをもった戦略論です。つまりIMC論もまた、デジタルテクノロジーの進化の恩恵を受けて発展してきた戦略論なのです。
次回は、「エンゲージメント論」「クチコミ論」について、解説していきたいと思います。