アンバサダープログラムを取り入れて売り上げ25%アップの成果(日本ケロッグ)

1年目の成功を受けて、お母さん向けプログラムを開始

五味田:課題は大きく2つあります。まず1つ目は、アンバサダーさんの質的な充実です。最初の1年目は人数を増やすというフェーズでした。それが年間目標の3.5倍を獲得することができたので、次はより発言力の強い方にどうやって参加してもらうかが課題です。どうすればアンバサダープログラムの強い型を作れるかということですが、これはある程度試行錯誤でやっていくしかないと思っています。

2つ目の課題は、他ブランドでの展開です。今年から、子ども向けブランドである「フロスティ」「ココ」を軸にして、「ケロッグママ アンバサダー」を始めました。今年の課題はこのプログラムを成功させることです。

藤崎:「ケロッグママ アンバサダー」を始めたきっかけを教えてください。

五味田:ケロッグには子ども用の商品がありますが基本的にはお母さんたちがお店で買うかどうかを決めます。そうしたお母さんたちも今やクチコミを重視していて、実際にSNSも使っているというデータがあります。ですので、そうしたお母さんたちに、お子さんに必要な栄養に関する知識や、ケロッグのシリアルっておいしいんだよ、という情報を受け取ってもらえるような仕組みを作りたいと以前から思っていました。

そこでオールブランの成功を受けて、アンバサダーという手法に取り組むことにしました。もちろんオールブランとは違うタイプの人たちですので、実際に運営していきながら、どういった発信の仕方だと受け止めてもらえ、より拡散して頂けるのか考えていきたいと思っています。

藤崎:アンバサダープログラムに感じている、今後の可能性について教えてください。

五味田:今後の可能性として着目しているのはアンバサダーさんの意見の反映です。みなさんの熱心な意見はとても参考になりますので、どんどん反映させたいと思っています。具体的にはプロモーションや新商品の開発など、一緒にやっていけることを、いろいろ追求していきたいと考えています。

藤崎:どんどん広がって行く感じですね。

五味田:まさにそういう感じです。実際に運営していく中で、「こういう活用の仕方もあるんだ」という気づきが次々と見つかっていく予感がしますので、フレキシブルにオープンに見ていき、「こういうこともいいな」ということがあれば、随時、柔軟に対応してプランの中に入れ込んでいこうと思っています。

藤崎:私はアンバサダープログラムとは理念や思想であって、内容はブランドごとに違うものだと思います。つまりブランドごとにカスタマイズして運営されるべきですし、運営してみて始めてみてわかること、柔軟に対応していく必要もあると思っています。その意味で今おっしゃられたように、アンバサダーとのやり取りによって、プログラム全体をフレキシブルに発展させていくことは重要で、ケロッグさんの場合は大変理想的なプログラム運営だと思います。

五味田:確かにそうだと実感しています。こういうマーケティングはとても新しいやり方だと思います。取り組み自体に意義があり、柔軟性のあるプログラムだと思いますので、今後いろいろ進化させていきたいと考えています。

藤崎:リアルタイムマーケティングの時代です。“進化させていく”というのは素晴らしいと思います。

藤崎:そういえば、昨年はテレビCMのぶら下がりで「アンバサダー募集中」というスーパーが出ました。また3月の新製品発表会でも、プレスキットの中に「ケロッグママ アンバサダー」の告知が入っていました。

2015年はTVCMのラスカットでもアンバサダーを募集した。

五味田:私たちは、アンバサダープログラムを、ケロッグが考える360度プロモーションのかなりコアな部分に位置づけています。だからいろんなところでシナジーを出していこうと考えています。

また、私は今のいわゆるマスメディアで足りない部分を、アンバサダープログラムがいろんなカタチで埋めていってくれるんじゃないかと期待しています。

藤崎:PR視点で言うと、企業がコアなファンと一緒に活動しています、という活動自体にPR効果も期待できるでしょうね。

五味田:近年は消費者の声を聞こうということで、どこの会社もそうした姿勢を謳っていると思います。その意味で、アンバサダーの方々は、消費者であり、顧客であり、ファンの方なので、その方たちの声を取り入れたり、一緒に活動をおこなったりすること自体、会社が次の成長に向かって進んでいると思っています。

藤崎:今の時代に一番要求されている企業とユーザーの関係がここにある気がします。そもそもケロッグというブランドにちゃんとストーリーがあるということが一番の原動力になっている気がしますね。

五味田:確かにそうですね、もともと保養所からスタートして、保養所の人に健康的なものを食べさせたいということで作られたのがシリアルで、創業したケロッグ兄弟の意志をずっと引き継いでやっているという会社の歴史と物語があります。

藤崎:そうしたファンの人たちから愛されるストーリーがあるということが大事ですよね。

五味田:まだまだお伝えしたいファクトがたくさんあります。

次ページ 「日本の事例を世界に広げたい」へ続く

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藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

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