今や3人に1人はフリーランス。アメリカでフリーランスが多いワケ

アメリカでは、みんなが専門職

アメリカの雇用には総合職採用といった概念がなく、どんな職種であれ、就業する時点でその役職に対する一定の専門的な経験や知識が求められます。ですので就職活動の前に、まずは自分が希望する職種での経験を積むことが必要です。そのための準備として企業でインターンをしたり、必要であれば専門的な知識を勉強するための学校へ行ったりすることが一般的です。

例えば僕が身を置く広告クリエイティブ業界では、就職前にAdvertisement学部がある大学へ行くか、そうでなければ大学卒業後にポートフォリオスクールと呼ばれる広告クリエイティブを専門にした学校に行くことが多いようです。例えばポートフォリオスクールのひとつMiami Ad Schoolでは、エージェンシーでインターンを経験することが授業の一環となっています。

画像提供:shutterstock

そうして経験を積んだ上で、希望する企業が募集しているポジションに対して履歴書を送ります。それぞれのポジションには、その役職に求められる経験やスキルがJob descriptionとして詳細に明記されています。(例えばこちら。)ですので新卒採用と中途採用の区別もありません。年齢などに関係なく、経験によってポジションが変わるからです。(公平を期するために、採用の際に年齢を聞くことは法律でも禁止されています。)極端な話、いくら優秀な大学を出ていても、大学での専攻が全く違ったり、その職に必要な経験が無ければ(例えばクリエイティブ職希望なのにポートフォリオがなければ)、その役職に就くということは通常ありません。非常に実践主義的な考え方です。

このようにすべての職が専門職であり、総合職という概念や雇用形態がありません。そもそも終身雇用が前提とされていないので、総合職として採用され、入社後に長い研修を受けたり、適性を見て配属が決まったりといったこともありません。もちろん転勤も(自分で希望しない限りは)ありません。この総合職採用というシステムをアメリカ人の友人と話したことがありますが、適性を第三者によって判断され、自分の配属が決定されるということは、個人を重視するアメリカではなかなか理解し難い考え方のようでした。

そういう訳で、社会経験を増すに従って、ほとんどの職業の人が自然とフリーランスとして生きていくための技能と専門性を高めていきます。

こうして書くと、日本の雇用制度や総合職を否定しているように聞こえるかもしれませんが、もちろんそういうことではありません。法学部出身の超優秀コピーライターや理工学部出身のCMプランナー。海外のエージェンシーからも一目を置かれる、そうしたバックグランドを持った日本人クリエイターがたくさんいます。ポテンシャルを見て採用する日本の新卒採用とは、雇用におけるストラクチャーがそもそも違うという話です。

また日本の企業の中には、優秀な社員を社費で海外のビジネススクールへ派遣をしたり、また海外企業への研修をサポートする制度があります。これは長期的な人材の育成のプランを建てやすい終身雇用を前提とした、日本ならではの素晴らしいメリットだと思います。こういったサポート制度は効率重視のアメリカではなかなか在り得ないことで、本当に羨ましい限りです。

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川島 高(アートディレクター)
川島 高(アートディレクター)

1981年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2004年に渡米。文化庁が主催する新進芸術家海外研修員として、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) にてメディアアート修士課程修了。アーティストとして作家活動を行う傍ら、アートディレクターとしてAKQAなどの広告代理店にて活動。日本人として初めてGoogleのクリエイティブラボに参画。サンフランシスコ在住。

Facebook: https://www.facebook.com/takashi.kawashima
Twitter: https://twitter.com/kawashima_san

川島 高(アートディレクター)

1981年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2004年に渡米。文化庁が主催する新進芸術家海外研修員として、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) にてメディアアート修士課程修了。アーティストとして作家活動を行う傍ら、アートディレクターとしてAKQAなどの広告代理店にて活動。日本人として初めてGoogleのクリエイティブラボに参画。サンフランシスコ在住。

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