5月18日に、コピーライター・渡辺潤平さん(渡辺潤平社)の新コラムがスタートします。大学卒業後、博報堂に入社し、ground LLCを経て独立、今年でコピーライター歴17年、フリーランス歴10年を迎える渡辺さん。今回のコラムでは、「デジタル」や「グローバル」といった外部環境の変化に左右されず、「コピーライター」として自らの専門性を突き詰めていくために必要な考え方・心構えを、広告界以外の領域で活躍する「職人」の方々とともに考えます。この記事では、今回のコラムに寄せる、渡辺さんの思い、アドタイ読者の皆さまへのメッセージをお届けします。
第0話「想いときっかけ」
渡辺潤平と申します。コピーライターの仕事に就いて、この春で17年目になりました。いつまでも若手のつもりで、のうのうと過ごしてきたら、気づけば来年で40歳。自分が博報堂に入社したころの先輩方に比べると、自分の未熟さに愕然とします。
フリーランスとして活動を始めて10年。無我夢中でここまで仕事をしてきましたが、ふと周りを見回すと、広告を取り巻く環境も大きく変化していることに気がつきました。
「スピード」と「多様性」が、以前に増して要求されるように思えます。ひとつのことを突き詰める人より、あれもこれもできる人が、評価を集めるようにも感じます(あくまで主観ですが)。
それがいいことなのかどうかは、まったく別の議論として置いておいて。今、自分の興味は、それとは逆の方向を向いています。あれもこれも、ではなく、自分のできることを見極めて、その一点に集中して、一歩ずつ技を磨いていきたい。そんな思いが日増しに強くなっています。
以前から、僕は「クリエイター」という言葉がとても苦手でした。感性軸中心で、失敗しても許される不安定な人、のような感じがするし、そういう言葉に甘えきっている空気みたいなのも好きじゃないんです。それよりも、僕は「職人」という言葉に強烈に魅かれます。自分が求められている能力を決して見失わず、黙々と、丁寧に、日々の仕事を重ねていける人でありたい。欲張らず、浮足立たず、コツコツと。
それって、古い考え方でしょうか?
世界の面白動画、たくさん知ってなきゃダメですか?海外の広告賞でトロフィー掲げなきゃ、できない人ですか?夜の街を歩き回って人脈を広げるよりも、家で山本周五郎や山田風太郎を読んでいるほうが、圧倒的に自分の糧になる気がするのは、もう時代遅れですか?
そうじゃない、と思いたいんです。同じことを続けていくことの尊さだって、広告の世界でも、まだまだ必要とされるはずだと信じたいんです。
今回、宣伝会議さんからコラム執筆のお誘いをいただいたとき、まず頭をよぎったのが、ここまで書いたような、思いとフラストレーションの中間みたいな感情でした。ここから先の自分の働き方を問い直すという意味でも、一度、この感情を棚卸ししてみるのはどうだろう。そう考えてみました。
タイトルは、「非進化論」。
進化よりも、成長に軸足を乗せて働くことの意味と意義を問う、というと、ちょっぴり大袈裟ですが…。自分の得意とすること、自分が求められることを積み重ねることで、技術を高め、自らのステージを上げていく。そんな働き方をしている、広告の世界の外にいらっしゃる方々を訪ねて、それぞれの「仕事論」を伺うことに決めました。
渡辺潤平さんの「非進化論」、18日に連載スタートします。
第1回は、アニヴェルセルみなとみらい横浜 料理長の青柳征司さんにお話を伺いました。お楽しみに!