「お客様にとっての価値」を追求する、マーケティング視点のイノベーションとは?

広告主、広告業、メディア、クリエイターと広告界のさまざまなキーパーソンが一堂に会し、マーケティング・コミュニケーションの現在、そして未来について議論する「AdverTimes DAYS(アドタイ・デイズ) 2016」(宣伝会議主催)。今年は「BEYOND~お客さまと向き合おう」をテーマに、4月12日~13日の2日間にわたって開催した。“生活者ファースト”のマーケティングとクリエイティブを考え、行動に移すために、企業内の組織の壁や既存の慣習、これまでの成功体験をいかに超えていくか――。本コラムでは、講演の一部をレポートとして紹介する。


講演者

  • 北川廣一(サントリー食品インターナショナル 執行役員 マーケティング&イノベーション担当 兼 食品事業本部副本部長)
  • 荒尾健太郎(帝人 専務執行役員 新事業推進本部長 兼 マーケティング最高責任者)

コモディティ化した市場環境の中で、技術革新によるイノベーションだけでなく、「お客さまにとっての価値」という、マーケティング視点でのイノベーションが強く求められている。BtoB、BtoCと事業モデルは異なるものの、マーケティング視点のイノベーションでそれぞれの業界を牽引しているリーダー企業2社に、マーケティング視点の、あるいはマーケティング部門発のイノベーションを起こす取り組み・考え方について聞いた。

事業別の組織に横串を刺し価値創出に寄与する

――お二人は、社内でどのような役割を担っているのでしょうか。

サントリー食品インターナショナル 執行役員 マーケティング&イノベーション担当 兼 食品事業本部副本部長 北川廣一氏

北川:サントリーの食品事業本部は、二つの事業部で構成されます。「伊右衛門 特茶」「GREEN DA・KA・RA(グリーン ダ・カ・ラ)」など健康系の商品を開発する「ブランド開発第1事業部」と、「なっちゃん!」「BOSS」といった嗜好系の商品を開発する「ブランド開発第2事業部」。私は、「コミュニケーションデザイン」と「イノベーション」という視点で両部門に横串を刺し、サポートする役割を担っています。「横串」とは、言うは易しで、実行するのは非常に難しい。売上・利益に責任を持っている事業部に対し、「こういうコミュニケーションをしたほうがいい」「こんなイノベーションがあったらいいのでは」などと横から口を出す私は、ともすると嫌われる立場になりかねません。業務を円滑に進めるための最大の秘訣は、厚かましさとキャラクターなのでは、と思います(笑)。

荒尾:レーヨンメーカーとしてスタートした帝人は、化学技術や最先端の研究開発を経て、現在では「モビリティ」「情報・エレクトロニクス」「ライフプロテクション」「環境・エネルギー」「ヘルスケア」をフィールドに、高機能素材・複合材料、電子材料・化成品、ヘルスケア、繊維製品・流通、ITなど多岐にわたる事業を展開しています。私はそこで、マーケティングの最高責任者と、新規事業を推進する役割を兼任しています。というのも、帝人はブランドステートメントに「Human Chemistry, Human Solutions」を掲げ、世界のさまざまな課題やニーズに応えるソリューション、すなわち価値を提供し続けることを目指してきたのですが、近年「帝人は、社会に対して本当にソリューションを提供できているのか?」という疑問が生じてきました。そこで、CMOとしてマーケティング視点で帝人全事業に横ぐしを刺し、また新事業創造においても、そういう視点で考える役割が必要だということになったのです。

次ページ 「組織や専門性を超えた融合がイノベーションを起こす」へ続く

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