【前回コラム】「過少フリークエンシーとフリークエンシー過多の二極化」はこちら
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テレビの視聴データに関しては、ビデオリサーチの番組平均視聴率(毎分データを番組放送分数で割り戻した数値)がベースで、その昔はCMタイムの視聴率計算も、その直前番組の平均視聴率を足し上げ(GRP算出)て使っていたものだ。
しかし今では、テレビ視聴実態はいろんな角度から見ることができるようになっている。
筆者は下記の3つが新たな評価視点であると思う。
- 視聴構造
- 視聴者定着率(ロイヤル視聴者率)
- コ・ビューイング率
まず、「視聴構造」だが、これは同じ視聴率でも何人が何秒観ているかで実態が違ってくるということである。
たとえば、ドラマは視聴する人のほとんどが番組を最初から最後まで観る比率が高い。(まあ当たり前ですよね。つまらなくてチャンネル替えてしまう以外は、途中だけじゃ話が分からないし、楽しめない。)
ところが、音楽番組などは、視聴しているテレビ端末のうち、一番多い分数は10分弱であったりする。つまり、自分の好きなミュージシャンが出てくるところだけ観ている。
音楽番組はドラマと比べると、入れ替わり立ち替わりいろんな視聴者が観ては流出する視聴構造と言える。また若年層は高齢層よりはるかにチャンネルを頻繁に変えるザッピング行動がベースになっている。定着させるのが難しい視聴者だ。
また、「視聴者定着率」についてだが、習慣的な視聴になっているベルト番組は別にして、週1回の箱番組に関しては、レギュラー視聴の度合いが違う。筆者はとりあえず1クール13週のうち8週以上視聴しているテレビ端末をロイヤル視聴者と定義している。そのデータを見てみると、意外にもロイヤル視聴者率が5%~10%程度の番組が非常に多い。ロイヤル視聴者は思ったよりずいぶん少ないのだ。
ちなみに調べた中でロイヤル視聴者率が最も高かったのは、「ブラタモリ」だったが、アドタイ読者は腹落ちするだろうか。
最後は、「コ・ビューイング率」。テレビの前に何人いて視聴しているかである。ティービジョンインサイツ社の視聴質データによると、ひとり世帯は別にして、複数視聴者がいる世帯においては、一人より二人で観ているほうが、二人より三人で観ているほうが、より画面注視率(アテンションインデックス)が高いことが分かっている。コ・ビューイング率とは死語になった感もある「お茶の間」という概念をデータで評価するものかもしれない。
また、このコ・ビューイングの測定では、家族の構成員の誰と誰で観ているかが分かるので、「お母さんと子供で観ていて、子供が笑っている。」(表情の測定も可能)という状況が把握できる。子供もターゲットに含まれるファミリー向けの商品やサービスではこういう観測も意味があるだろう。
「クルマが欲しい30代の旦那さんと決済権のある奥さんの観ているのは?」なんて測定も面白いかもしれない。
このように、毎分の世帯視聴率や、F1、M1といった個人視聴率だけで、テレビの視聴実態がすべて把握されているのではなかったことが分かる。
こうしたデータをテレビの視聴質の改善やCMの本当の効果の評価にどう取り入れるか、そのスキル確立が求められている。新たなデータ群は、みな秒間データで、膨大なデータ量だ。それらをクレンジングして、実態をしっかり切り取る分析にはマーケター発想と「技」が要る。
デジタル端末としてのテレビや、視聴実態を観測するセンサーデータをネット回線でリアルタイムに取得するという、デジタルデータがマス広告の雄であるテレビの最適化を促す。「マスメディアによるコミュニケーション」のデジタルデータによる最適化。これもデジタルマーケティングなのである。