宇宙に行くと重力がなくなるので、“拠りどころ”や“落ち着き”がなくなる?(ゲスト:野口聡一さん)【前編】

宇宙の日常生活では、洗濯を一切しない!?

野口:実は、私が行ったときはそうだったんですけど、今は若田光一さんが日本記録を持っています。私もぜひ次は、私の先輩ですが若田さんの記録を抜くべく頑張りたいなと思っています。

澤本:野口さんは宇宙から写真をいっぱい送ってましたよね。

野口:そうなんです。やはり宇宙にいる間の地球が刻々と変わっていく感じをみんなに見せたくて。宇宙に行ってみると、地球って生きてるなと思います。毎日違う姿を見せてくれるのを自分で目の前で変わっていくのを何とか伝えたいと。それで一生懸命カメラを構えて。幸い私が2回目に宇宙に行った頃からツイッターで写真を載せられるようになりました。今はみなさんごく普通にやられている行為ですが、宇宙から写真を送れるということがまだ認知されてない頃でした。それをやって喜んでいただいて、よかったと思います。

中村:ツイッターも50万人フォロワーがいますもんね。

野口:そうですね。5年前の東日本大震災のときも宇宙から見た仙台や岩手県の様子を送ったんですけど、宇宙からでもちゃんと被災地の様子や日本の小さな村の様子がちゃんと見えるということを伝えられるのはツイッターの良い点だと思います。

澤本:宇宙からどれぐらいのものまで見えるんですか?

野口:良い質問ですね。これは慣れもあると思います。最初のうちは島単位ですね。パッと見てすぐ気がつくのは日本列島、北海道、佐渡島ぐらいまでかな。だんだん慣れてくると自分が育った町や湖、さらに言うと空港ぐらいまで。

権八:肉眼で空港が見えるんですか!?

野口:見えます。なぜかというと、人工のものはピーッと線を引いたように、特に滑走路は白いアスファルトでできているので、真っ直ぐな線が、まさにそこだけチョークでピッと線を引いたかのように非常にくっきり見えます。大都市の東京などになると中心部は入り組んでいたり、いろいろな建物があったりで、ゴチャゴチャとしていますけど、空港は海の近くにあることが多いですよね。そういうところだと本当にハッキリと、空港に行く橋が見えたりしますね。

澤本:関空に行く橋など。

野口:関空やセントレアのあたり。あと長崎空港もよく見えますね。

澤本:宇宙では洗濯はするんですか?

野口:これは洗濯嫌いな人には朗報ですが、宇宙では洗濯しないんです。全くしない。なぜかというと水がもったいないから。宇宙では地上から水を持って上がるのが非常に重たくて、お金がかかるので、上げた水は極力リサイクルします。というか、ほぼ100%リサイクルですね。汗も含めて、トイレは言うに及ばず。

中村:濾過してまた使うと。

野口:そうです。理科の実験みたいですけど、煮沸して、蒸気を集めてということを延々とやっているんです。だから、昨日のコーヒーは今日の誰かのコーヒーになるという話をよくするんですよ。

一同:

野口:それぐらい水を大事にしているので、洗濯をするとすごい水の量を使っちゃうじゃないですか。だから、洗濯は一切しません。服を捨てるほうが効率的です。消臭面などに配慮して、1週間連続で着ても大丈夫という服をつくっているわけですね。

澤本:全部、循環させているわけですね。

野口:そうです。リサイクルです。ですから、そういう意味ではエコな空間。エネルギーは全部、太陽光で、水はほぼ100%リサイクル。食事も宇宙食はいろいろ言われますが、小さなパッケージで運んで、食べ残しをしないんですよ。これは別の理由があって、宇宙で食べ残しをすると、ゴミ収集が来てくれるわけじゃないので、自分達がいる空間の別の倉庫に置いておくだけだから、食べ残しがいっぱい溜まると臭いんですよ。

なので、一度開けたパッケージはちゃんとキレイに食べろという不文律があり、半端に残して食べ散らかすことをしないという。キレイに食べて、また小さく畳んで、ゴミはそれで捨ててくるんです。そういう感じで慎ましい生活を、リサイクルをしてやっております。

中村:定期便みたいなものも運んでくるんですか?

次ページ 「宇宙船の外に出て行う船外活動は怖くないの?」へ続く

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