マシンによるマーケティング変革は間近 — IBM米国カンファレンスレポート

人間は何をすべき? と考えさせられる機能群

グリーン氏と入れ替わりで、ステージに上がったのは、IBMコマース開発担当副社長のカリーン・ユスフ氏だ。会場に向け、「一人ひとりの消費者に合わせたコミュニケーション、それがどういったことなのか、具体例をお見せします」と呼びかけ、デモンストレーションを始めた。

IBMのカリーン・ユスフ氏。土木工学の博士号も持つ。

たとえばEコマース(EC)サイト。予定した売り上げに達していない商品があると担当者のスマートフォンに通知が届く。原因を探ると、競合他社のほうが安く、そちらに顧客が流れているらしい。その場でECサイト上の価格を下げるように設定する。人気商品の在庫数に応じて商品の表示順を変える–。24時間365日、セールスの最適化を図れるツール群が次々と紹介された。

できることはまだある。性・年代はもちろん居住地や趣味嗜好といったあらゆる情報を元に、自社のセールスに最も貢献する人物像を割り出す。彼らから最も反応を得られる写真を探し出したり、現在の天候に合わせたコンテンツに切り替えたり。同じ顧客でも価値観は常にうつろう。この前まで初心者だった人が経験を得てECサイトを再び訪れたとき、最適な商品を自動で勧めることもできるという。

ユスフ氏のパートのゲスト、自転車用品のネット販売を行うパフォーマンス・バイシクルのキャロル・ウェントワース氏(マーケティング担当上級副社長)。同社は、サイト訪問者の自転車への興味や専門知識のレベル、訪問時の目的に応じて適切なコンテンツを表示するシステムで、売り上げを伸ばしている。

デモンストレーションで会場が最も注目したのは、「対話形式でのソーシャルメディア広告の出稿」だ。デモンストレーターが「どんな人に広告を届けるのがよさそう?」とマイクに向かって話しかけると、「あなたのサイトでは、○○といった人が多くの商品を購入しています」と合成音声が即座に回答する。「ソーシャルメディア上で似たような人はどれくらい?」「2万人ほど見つかりました」「彼らが魅力的に感じる写真を選んで」「3件見つかりました」…と会話を繰り返していくだけで、細かな設定がどんどん進んでいく。

対話形式で、ソーシャルメディア広告の出稿プランを設計するデモ。一瞬、何が起きているのか? といった空気に包まれたが、デモ後は会場から喝采が起きた。

やりたいことを話しかけるだけで、ターゲット選定からコンテンツ内容、配信タイミングの設計ができる。

にわかに信じがたかったが、どうやら芝居ではないようだ。後で会場の関係者に「広告代理店がいらなくなるのでは?」と尋ねてみると、「メディアの広告枠売買の仲介だけ、というのでは、もっと厳しくなるかもしれませんね」との答えだった。

次ページ 「IBMはコグニティブで1.9兆円の売上高」へ続く

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