人間は何をすべき? と考えさせられる機能群
グリーン氏と入れ替わりで、ステージに上がったのは、IBMコマース開発担当副社長のカリーン・ユスフ氏だ。会場に向け、「一人ひとりの消費者に合わせたコミュニケーション、それがどういったことなのか、具体例をお見せします」と呼びかけ、デモンストレーションを始めた。
たとえばEコマース(EC)サイト。予定した売り上げに達していない商品があると担当者のスマートフォンに通知が届く。原因を探ると、競合他社のほうが安く、そちらに顧客が流れているらしい。その場でECサイト上の価格を下げるように設定する。人気商品の在庫数に応じて商品の表示順を変える–。24時間365日、セールスの最適化を図れるツール群が次々と紹介された。
できることはまだある。性・年代はもちろん居住地や趣味嗜好といったあらゆる情報を元に、自社のセールスに最も貢献する人物像を割り出す。彼らから最も反応を得られる写真を探し出したり、現在の天候に合わせたコンテンツに切り替えたり。同じ顧客でも価値観は常にうつろう。この前まで初心者だった人が経験を得てECサイトを再び訪れたとき、最適な商品を自動で勧めることもできるという。
デモンストレーションで会場が最も注目したのは、「対話形式でのソーシャルメディア広告の出稿」だ。デモンストレーターが「どんな人に広告を届けるのがよさそう?」とマイクに向かって話しかけると、「あなたのサイトでは、○○といった人が多くの商品を購入しています」と合成音声が即座に回答する。「ソーシャルメディア上で似たような人はどれくらい?」「2万人ほど見つかりました」「彼らが魅力的に感じる写真を選んで」「3件見つかりました」…と会話を繰り返していくだけで、細かな設定がどんどん進んでいく。
にわかに信じがたかったが、どうやら芝居ではないようだ。後で会場の関係者に「広告代理店がいらなくなるのでは?」と尋ねてみると、「メディアの広告枠売買の仲介だけ、というのでは、もっと厳しくなるかもしれませんね」との答えだった。