ブランディングの「未来形」をさぐる

ブランドがデジタルプラットフォームを提供していく

面白いのは、価値が高く、商品が広範囲なマスターブランドやプレミアムブランドであれば、ダッシュボタンの代替となるような、「デジタルソリューション」が必要になってくるということです。もしルイ・ヴィトンやディズニーのロゴのダッシュボタンがあったとしても、どんな物がどんな値段で提供されるのかが事前に分からなければ、怖くてボタンを押せないでしょう。そのようなブランドは、デジタルプラットフォームのコネクティビティを違う形で利用するように思います。

例えば、ディズニーのダッシュボタンであれば、ミッションである非日常的な娯楽体験のために、VRやホログラムディスプレイを使ったパーソナルなバースディパーティやエンターテインメントの提供になるでしょうか。VRヘッドセットやデバイスを使うことで、自宅の子供のパーティにミッキーをはじめ大好きなキャラクターを呼んでお祝いをすることが可能になるかもしれません。そこでの、ディズニーボタンは、デジタルで手軽にサプライズや楽しさ、幸せを提供できるプラットフォームになるはずです。

つまり、ブランドが消費者の生活のコンテクストに入っていくということは、製品の持つ物質的な価値だけでなく、消費者がライフスタイルのなかで実現していきたいジャーニーの中で有意義な価値を提供できるかどうかということです。

端的に言えば、それはブランドが生活のなかの情報サービスや具体的なソリューションサービスと一体化していくということです。ダッシュボタン同様に、スマートデバイス上のアプリサービスも単なるデジタルの情報サービスではなく、オフラインも統合されたソリューションになっていきます。ルイ・ヴィトンのようなブランドであれば、スマートフォンに旅行の予定を入れておけば、自動で「UBER」を手配したり、空港のファストトラックのチェックインをしてくれたりする、デジタルコンシェルジュプラットフォームになるかもしれません。

すでにデジタル化しやすい音楽や映像などのサブクリスプションサービスは、NetflixやAmazonのように独自のエコシステムを構築しつつあります。Netflixは家庭にダッシュボタンのようなボタンを提供することで、自宅で映画鑑賞をするときに一緒に食べるピザと飲料を自動的に注文し、リビングのライトをムーディにしてくれるサービスを考えています。デジタルによる仕組みが、コンテンツやコンテクストと密接に結びつくことでブランド価値を上げる努力が、今後はより一層必要になるでしょう。ブランディングは以前であれば、購買する店舗におけるパッケージングや売り方の一部でしたが、未来では消費者の生活のなかに入り込んでいく「ライフバリューサービス」の一部になっていくのではないかと思います。

次ページ 「カスタマーサポートやフィンテックでもブランド化」へ続く

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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