ブランディングの「未来形」をさぐる

カスタマーサポートやフィンテックでもブランド化

同じことが、情報サービスにおいても言えるはずです。Siriのようなパーソナルデジタルアシスタントやペッパーが家庭内でも普及していくようになると、カスタマーサービスはただ便利なだけの端末であるよりも、たとえばミッキーマウスやドラえもんが家にいるようなコンテンツやコンテクストにおいてブランド化されたサービスの提供が起こるようになるかもしれません。それは、現状ではAIによるボットサービスと呼ばれるものですが、コンテンツとして成熟することが可能であれば、ブランドにとって単なるサービスの効率化以上の存在になっていきます。

同様に、購買そのものが特定のターゲットとのライフタイムバリューを想定した信用取引がメインになれば、フィンテックと言われる領域もブランド化することが可能です。これはクレジットカードのプレミアム会員や金融サービスに特徴的だったサービスですが、デジタルサービスのような主に限界費用がゼロに近いものであればあるほど、先に使って価値を実感してから、後でお金を払うフリーミアムモデルが導入しやすいです。これは信用情報がメインになっていけば、限界費用が高い商品でもサブスクリプションサービスが可能になっていくでしょう。

Amazonプライムの配送無料サービスは実際に物理的なサービスですが、そのような存在です。フィンテックを信用情報ネットワークとして活用する際にはデジタルテクノロジーが不可欠ですし、実際に貨幣として流通しているものよりはポイントやBitcoinのようなバーチャルカレンシーがその信用を図る価値になっていくかもしれません。お金そのものもまだブランディングができる余地があると言っていいと思います。

そのような、イノベーションは単に新しさのためだけに存在するのではなく、マーケターとしてはブランドの価値を高める手段として取り入れることが今後、無視できなくなるでしょう。同時に、古典的な売り場のシェアを争うマーケティングではない、真に消費者の生活の中に入り込んでいくソリューションを提供できるのかという競争になるはずです。それは結果的に消費者の時間やお金を節約するだけでなく、過剰なパッケージや広告を減らし、無駄な資源の消耗も避けられるようになるはずです。

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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