SNSでの発信力が問われる、編集者・ライター
2010年代、電子書籍は紙の本の売り上げの1割程度でした。
たとえば、10万部売れた本の場合は、そのうち9万部は紙で売れていました。
今では、その数字が逆転しています。
アマゾンが契約した超人気作家のキンドル本を編集したのは、フリーの編集者だそうです。
多くの作家は出版社を通さず、編集者個人と契約を結び、アマゾンをはじめとする電子書店で、電子書籍を売るようになりました。
最近、出版社から独立する編集者が増えました。
出版社は紙の本を出す際の窓口としてはまだ機能していますが、紙の本の売り上げの減少とともにかなり淘汰されてしまい、優秀な編集者は辞めていっているそうです。
本が主に電子で読まれるようになってからは、SNS上で発信力があることが、編集者として求められる最重要スキルになりました。
編集者個人の発信力が、出版社の、いわゆる宣伝部の役割を担うようになりました。
ライターも同様です。書く力があまりなくても、SNSでフォロワーが多い、拡散がうまいという理由で、大きな仕事を依頼されているライターをよく目にします。
編集者には、他にも、電子書籍、メルマガ、note、オンラインサロン、イベント、物販など、本に限らずあらゆるアウトプットのカタチをプロデュースする力が必要になりました。
そんななか、個人として名前のあるスター編集者が何人か出てきました。監督の名前で映画を選ぶように、編集者の名前で本を選ぶという人も増えてきました。
編集者が著者を探して育てるだけではなく、「この人にプロデュースされたい」と著者のほうから編集者を指名するようなパターンが生まれたのも、この頃です。
あの有名実業家がつくる「未来の出版社」
旧来型の出版社が減少の一途をたどる一方で、電子書籍限定の出版社をつくる人が現れました。
Twitterのフォロワーが100万人以上いる、あの有名実業家です。
著者としてもベストセラーを多く持つその実業家は、自らの本はもちろん、他の著者の作品も自身のレーベルから電子書籍として出すそうです。
SNS上で強大な影響力のある彼がキュレーションし、推薦することで、その出版社の電子書籍はとてもよく売れ、彼の元には多くの魅力的な作品が持ち込まれるようになっていきました。
その成功をきっかけに、多くの人がマイ出版社を立ち上げ、「未来の出版社」と一瞬もてはやされましたが、そのほとんどは、まったく軌道に乗らず、すぐに撤退していきました。
結局のところ、SNS上の強力なファンコミュニティを持っていることが「未来の出版社」の最低条件みたいです。
「ギャル×黒髪」の逆襲論
時は戻って、2016年5月。
「未来の出版社」に対抗すべく、電子書籍を専門に扱う部隊が立ち上がるなど、出版界でも新たな動きが出てきています。
僕も『たった一人の熱狂』(見城徹著)のスピンオフ企画として、見城徹×新時代の編集者の対談を収録した電子書籍を作りました。
このコラムのテーマは『「紙」編集者の逆襲』です。
「第2回目にしてもうWebの話してんじゃねえか!」「紙編集者とかいって電子書籍つくってるのかよ」というツッコミもあるかと思います。
が、Web全盛時代に紙編集者が逆襲するためには、未来を妄想して、新しいトライを次々にしていかなければいけないと思っています。
派手なギャルばかりの中に、地味な黒髪の女の子がいたら輝いて見えるように、デジタルを理解してこそアナログ的なものが活きると思っています。
「手紙」などの“古き良き”を武器にするためにも、その正反対にある新しいことを早め早めにやっていきたいと思います。
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