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セールス・オンデマンドは、米国アイロボット社の「ルンバ」の日本における販売代理店として2004年に設立されました。今や「ロボット掃除機」の代名詞として知られる「ルンバ」ですが、市場の開拓とその普及には、常に消費者のクチコミと上手につきあってきた戦略がありました。その貴重なマーケティングストーリーを同社 取締役の徳丸順一氏に聞きました。
今回のゲスト
徳丸 順一(とくまる じゅんいち)
セールス・オンデマンド 取締役 第一事業本部 マーケティング部 部長
広告会社を経て、2006年4月にアイロボット日本総代理店 セールス・オンデマンドに参画。家庭用掃除ロボットのパイオニアである、アイロボットルンバのマーケティング活動を展開し、ロボット掃除機カテゴリー創出を行う。2010年1月、スウェーデンの高性能空気清浄機ブルーエアを日本市場に導入し、掃除機以外のカテゴリーへ進出。2013年4月より経営企画本部を担務。2015年4月より再びアイロボット事業のマーケティング全般を担務している。
新市場をどうつくるか
藤崎:ルンバのアンバサダープログラム「アイロボット ファンプログラム」を始めたのは最近ですが、以前からクチコミを重視していたそうですね。
徳丸:はい、そうですね。このことをご説明するためには、まずは弊社の創業時の話をしなければなりません。2004年、我々が日本の販売代理店としてアイロボットを扱い初めた当初、実際はなかなかうまくいきませんでした。理由はいくつかありますが、最初に学んだことは「新商品についてブランド側から発信するだけでは、消費者に全く理解されない」ということでした。
藤崎:まずは、使ってもらうことが大事ということでしょうか。
徳丸:いえ、もっと根本的な問題です。「ロボット掃除機」という存在自体が今までにないカテゴリーだったため、これまでの掃除機とは違った存在として、いかに世の中に価値を認めてもらうかがスタートだったのです。その上で、新市場をいかに生み出していくか、という順番です。つまり、マーケットそのものを日本で作らなければならないという課題にぶつかったのです。もちろんマーケットができなければ、ビジネスが成立しないわけなので、たいへん厳しい状態でした。
藤崎:市場をつくることが、スタートというのはすごいですね。
徳丸:そのときに気づいたのは、新カテゴリーを切り拓いていくというのは我々メーカー側だけでは難しく、消費者の方々と二人三脚で作り上げていくしかないという事実でした。
まずはロボット掃除機の存在価値を消費者に認めてもらうため、徹底的な店頭デモを行ない、一人ひとりのお客様に製品の特長や優位性を理解してもらえるように努めました。
藤崎:確かに生活者に受け入れられなければ、市場が成り立ちません。日本の「ロボット掃除機」の普及の歴史はルンバと共にあるというわけですね。ひとつの市場が作られるマーケティングストーリーとして興味深い話です。
徳丸:最近、Webサイトをリニューアルした2007年に私が書いたメモが出てきました。それを見ると消費者から生まれたクチコミを自社サイトへ繋げ、自社サイトから気付きを得て、さらなるクチコミに発展していくというようなイメージを描いていました。当時はまだ大きな広告展開ができなかったので、まずは消費者のクチコミを主役にすることを考えていました。
藤崎:今日はアンバサダープログラムについて聞くつもりでしたが、それ以前の、市場をどうつくるのかという根本的な話ですね。確かに「市場を作るためには、まずは消費者が主役でなければならない」、とても勉強になります。
徳丸:2000年代後半はファクトに基づく、コンテンツマーケティング的なアプローチをコツコツと一生懸命おこなっていました。例えば、「部屋の隅まで掃除できるのか信じられない」、「こんな丸いものが自分に代わってきちんと掃除できるはずがない」という声を払拭するためのコンテンツです。なかには、「実際に掃除機をかけた後でも、こんなにゴミが取れて、さらにその中にはダニが何千匹取れました」、といったコンテンツも作りました。
藤崎:今でいう、コンテンツマーケティングですね。
徳丸:そうです。ファクトベースのコンテンツを作ることで、それを見た人のクチコミが発生していきます。そしてクチコミが増えると、その中に次のコンテンツを作るためのヒントになる声が見つかって、今度はそれをコンテンツ化します。そういったループで、どんどんコンテンツとクチコミが大きくなっていくわけです。
藤崎:お話を伺っていると、必ずクチコミがでてきます。「ルンバ」はまさにクチコミと共に市場が拡大した商品と言えそうですね。