第4回「マーケティングオートメーションを検証して…本当にB2Bでもツカエルのか!?」

【前回コラム】「Push型からPull型へ。B2BにおけるInboundマーケティングとは!?」はこちら

顧客が発する、暗黙の活動を察知する

マーケティングオートメーションは、“魔法の杖”ではないと頭ではわかっているものの、期待せずにはいられません。それは既存コンタクトへのPush型のコミュニケーションが立ち行かなくなっているからでしょう。

第3回でも触れましたが、コンテンツをダウンロードするためにわざわざレジストレーションにプロファイルを落としていくような、あからさまな行動を起こすユーザーも減少しました。おいそれと電話やメールのオプトインを「Yes」にチェックして後日電話がかかってくることを期待しながら去っていく訪問者もいまや稀有です。
トラッキングされないために、極力隠密行動で自己学習することの方がトレンドです。それを捕捉するためにも、重要なツールとなり始めています。

高価なマーケティングオートメーションを導入できずとも、IP Finderのようにドメインベースでサイト訪問者をトラッキングできるツールを用いるだけでも、面白い傾向が判明します。

ぜひ、週次で訪問アカウントの増加数や滞在時間を比較したり、Webサイトに訪れた検索ワードの変化を見比べてみてください、その個社の興味度合の変化が如実に見て取れます。

そう。いまや、顧客が発するDigital上の暗黙の活動(Body Language)をこちらが察知しなければならないのです。

マーケティングオートメーション、導入の壁

しかし同時に、マーケティングオートメーション導入の難しさに直面しているマーケターも少なくはないでしょう。
直面する壁はまず以下の3つだと想像します。

  1. コンタクト情報がない、収取できない
  2. コンテンツ作成のリソースが継続できない
  3. スコアリングが上手に設計できない

1.は、既存コンタクトDBを保有していないと、最初から挫折します。マーケティングオートメーション上で新たにコンタクト情報収集を試みるも体力が続かず、断念してしまう場合が散見されるように思います。これを機に社内中の名刺をかき集めてデータ化することも大仕事ですよね。

当社は反対の悩みがあり、大量のコンタクトを格納した別DBがすでに存在します。マーケティングオートメーションのために、また再度オプトインを取得しなければならないのか、もしオプトアウトしたらそれはマーケティングオートメーション上の情報を更新するだけでよいのか、大本のDBも同時に適用すべきなのか、新しいプライバシーポリシーの設定が課題になっています。

2.はお金とヒトとの体力勝負ですよね。

特別チームをつくるくらいの気概がないとダメかもしれません。ですが、In Personのセミナーは比較的、どの会社でも定期的に開催しているかと思います。それをマーケティングオートメーションと連携させたり、ビデオで撮りためてNurturingコンテンツに転用するとか、セミナー自体をオンライン型に移行しつつ、オンデマンドコンテンツにも転用するなどで回避できる場合もあります。一つのマーケティングアセットを「二度おいしく」なるよう工夫してみましょう。

3.はまじめに取り組まなければなりません。当社のような外資系企業では、そのスコアリングロジックそのものが海外で決定され、日本ローカルでは干渉できない場合もあります。

また、マーケティングオートメーションが海外発だからか、少なからずともそのロジックに引きずられる傾向があるようにも思います。

セミナー参加や無償評価版利用への得点配分を高くしすぎてしまう…。よって一度それらに参加するだけで、スレッシュホールドをほぼ超える設計になっている場合が多いのではないでしょうか。フォローアプローチしてみると、意外に肩透かし、ということも。

セミナーでいうと、もちろんわざわざ足を運んでご参加いただいているので興味があるからこそでしょうが、ただの情報収集も多発し、日本人には向いていない配点ロジックなのでは!?と疑いたくなることがあります。

まだ模索中ですが細かく細かく、配点をまぶして、その積み重ねでスコアリングロジックを構成した方が適していると感じています。当社のある例ですと、メール開封を配点無しにすると65%がスコアレスになってしまう場合もあります。

メール開封・クリックのみならず、何ページWebを回遊したか、何秒滞在しているか、検索ワード、特定のどのページ(価格や事例ページ)にアクセスしたなどを察知した方が現実に即している気がします。

ツールを使うのはあくまで「人」

これらの導入障壁があるとはいえ、やはりこのツールに期待せざるをえないのは、第2回でも触れたマーケティングファネルの一般的な確率を超えたいからです。

Outboundコールしても5~10%のリードを出すのが限界。反対にいうと、残りの90%余りを捨てているということになります。10%の壁を打ち破り20%~30%にひき上げる手法は、マーケティングオートメーションを活用するしか今のところ思い当たりません。せっかく収集したリストや想定したセグメントを再活用しないのはあまりにもったいないですよね。コンタクトリストは大切な資産なのです。

深堀りすると、BANTで特にT(タイミング)が合わない案件は意外に多くの割合を占めます。Nurturingし、機をみて再浮上させるプロセスを半自動的に実装できるのは願ったりかなったりです。一度失注した案件をNurturingして再度トライできることもまたしかりです。

また、Outboundコールした後にWebサイトへアクセスしている方はかなり興味が高い、という説もあります。電話口ですべてをさらけ出してくれる方は、やはり多くて10%が限界です。コール後、自己学習する行為をツールで個人単位まで捕捉できると、次回荷電するきっかけも作れますし、全てお見通しなので会話も弾みます。

手を変え品を変え、新しいキャンペーンを設計し続けるのはマーケターにとってなかなかの消耗戦です。

単一製品を扱う企業はなおさらでしょう。手も品も変える策が思いつかなくなります。さまざまな局面で敗者復活戦が可能になるのはとても大きいメリットです。

浮かばれない、我々B2Bマーケターが脚光を浴びることができる…かもしれないマーケティングオートメーションというツールについ寄り添いたくなってしまいますよね。“魔法の杖”ではないとはわかっていても。

ただ、ツールを使用するのはあくまでも人間なので、依存しすぎることなく属人的な部分も含めて上手に運用することが大切です。

次回は、最終回の予定です。

これまでを踏まえて、B2Bマーケティングの今後について触れたいと思っています。

友廣啓爾(日本マイクロソフト/エンタープライズマーケティング本部 部長)
友廣啓爾(日本マイクロソフト/エンタープライズマーケティング本部 部長)

日本マイクロソフト エンタープライズマーケティング本部 部長職に従事。とある大手印刷会社、とあるベンチャー出版社を経てHP、SAPなどの外資系IT企業にてフィールドマーケティングを経験し現職に至る。ダイレクト、インダイレクト問わず、営業部隊と密接に関わりながら行われるB2Bマーケティングをこよなく愛し、DemandGenerationのあるべきカタチについて日々思いをはせる。現職では、マイクロソフトの法人顧客に対して実施するキャンペーンの設計や仕組みづくりに携わる部署の取りまとめを行っている。

友廣啓爾(日本マイクロソフト/エンタープライズマーケティング本部 部長)

日本マイクロソフト エンタープライズマーケティング本部 部長職に従事。とある大手印刷会社、とあるベンチャー出版社を経てHP、SAPなどの外資系IT企業にてフィールドマーケティングを経験し現職に至る。ダイレクト、インダイレクト問わず、営業部隊と密接に関わりながら行われるB2Bマーケティングをこよなく愛し、DemandGenerationのあるべきカタチについて日々思いをはせる。現職では、マイクロソフトの法人顧客に対して実施するキャンペーンの設計や仕組みづくりに携わる部署の取りまとめを行っている。

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