ファンとコミュニケーションできるプラットフォーム
藤崎:今後の課題や可能性を教えてください
徳丸:我々は創業以来、クチコミを重視し、今までいろいろな方法で向かいあってきました。しかし、なかなか「クチコミの仕組化」まではできませんでした。
その意味では、「アイロボット ファンプログラム」という、アクティビティを発信する確固たるプラットフォームができたことは大きな価値があると捉えています。今後はいろいろな部署も絡めてこのプラットフォームの有意義な活用方法を探していこうと考えています。いわば「クチコミの底上げ」も目指したいところです。
藤崎:なるほど。ファンの組織化は、言い換えると「ファンとコミュニケーションできるプラットフォーム」というわけですね。
徳丸:今の時代は、どうしても広告だけでは埋められない領域がありますので、コミュニケーションできるプログラムは非常に大事です。次に課題ですが、これもいくつかあります。例えば、アイロボット社製品のファンはたくさんいるのですが、どうしても「モニター」や「ファンイベント」に接触できない人がたくさんいます。これは物理的に仕方ないことですが、そういう方々にどうやって情報を伝えて行くのかは継続した課題です。
認知率90%越えからの戦略にはクチコミが不可欠
徳丸:2009年あたりから広告に力を入れた結果、数年も前から認知率は90%を越えています。しかし、実際の普及率はまだまだ大幅に伸ばせる余地があると思っています。その推進役はやはりクチコミだと思っています。
藤崎:市場を伸ばす上での具体的な障壁を教えて頂けませんか。
徳丸:日本は特に、”掃除は自分でやるべき”という意識がまだ根強く残っています。掃除の自動化はともすれば”手抜き”や”サボり”と思われがちです。掃除に対するそもそものマインドを変えていくことが重要だと思っています
藤崎:米国アイロボット社の理念である「これからの時代、ロボットに任せられるものは、任せて、人はその分の時間を有効に使おう」という発想が大事ということですね。
よく考えれば、昔は洗濯も洗濯板を使って手で洗っていましたが、今は洗濯機に全てを任せていますよね。だから掃除機が部屋を自走するというのは正当な進化だと思います。つまり、「ルンバ」のビジネスは、「本当に掃除ができるのか」という消費者の懐疑心を解くと同時に、「ロボットにできるものは任せよう」という掃除そのものに対する意識変革も関係してくるというわけですね。
徳丸:その通りです。それらを解決するのは企業からの発言だけでは難しく、ファンや消費者と二人三脚していく必要があり、この取り組みには終わりはないと思っています。
藤崎:例えば、地方に住む人の家は広いですから、本当はルンバが大活躍するはずですよね。
徳丸:「狭いから」「畳だから」「モノが多いから」などの理由で、我が家では使えないという誤解が多いです。実際、ルンバで掃除できますし、うまく活用している方もたくさんいらっしゃいます。我々としては、不安や疑問に対し、リアルな消費者の声で代弁することが理解を促す一番のきっかけになると思っています。