AIでAISASモデルはどう変わる?
児玉氏はAIがマーケティングに及ぼす影響について、AISAS(R)モデルのプロセスの変化を予測する。ちなみにAISASのプロセスとは電通が提唱し、2005年6月に商標登録した購買行動プロセスを説明するモデルのひとつであり、インターネットの普及により“Search”や“Share”といった行動を加えていることが特徴である。
Attention(注意)はConcious(意識)からUnconsious(無意識)へ、Device(端末)からAgent(代理人)へ
今後、車などをも含む接触デバイスの多様化により一つのタッチポイントではサービスが受けられないという現象が起こってくるのではないか。そして今までは、人間は意図的に注意して情報を取りに行っていたが、今後は意識しない形で入手するようになり、音声対話のようなインターフェィスに変わってくるのではないかということである。具体的にはアップルのSiri、アマゾンEcho、 チャットボット、 ロボホンなどのようなインターフェィスが考えられるということである。
InterestはSocial(集団意識)からBias(偏向、集合的無意識)へ
ソーシャルグラフによるレレバンシーからよりターゲティングされた施策が中心になってくる。個人単位で最適化されるので平均値はマッチングされなくなり、もの凄く突出した物でないと浮かび上がらない。児玉氏は米国で日本のBabyMetalというグループが人気を博している理由をこの現象の表れとして説明している。
Search(検索)はContextual Recommendation(行動に基づいた推薦)へ
グーグルのCEOはモバイルファーストからAIファーストの時代に入ったといっており、検索という意図的な情報よりも意図しないでスマホなどから収集される情報を活用したものになるだろうということである。例えば、飛行機に乗る予定が入っていれば、いつ出発してどの様に行けばいいのか、勝手に教えてくれるインターフェィスが登場するのではないか。
ActionはConversion (成約)からContract (継続的な関係構築)へ
無意識の世界になると、今後は一回の消費行動ではなく、継続課金のような契約関係を結び、常にコンタクトできることが重要となる。同時に、マーケティングの効果測定やKPIも変わってくるのではないかということであった。
ShareはCreation (意図的に作る)からContext Capture(体験のキャプチャー)へ
ブログやツイートなど意識の資源を使う行動は限界を迎え、だんだんやらなくなってくる。HTMLからブログ、ツイッター、インスタグラムやタンブラーなどどんどん楽な方向にシェアは向かっている。AI時代にはその人が体験していくことのコンテクストを、キャプチャーするだけでコンテンツになってゆく時代になるのではないか。
そしてAIの時代には、ソーシャル時代にあったような消費者が意識した形での能動的な消費行動は無くなってくるのではないかということである。すなわち、サービスを使っているとか買っているとかを意識せずに行動する時代が来るのではないか?そこではエージェントやコンテキスト情報、データをどうとってくるか、そしてレコメンデーションによる継続的な体験やコントラクト、キャプチャーのようなことが、メディアと情報サービスの設計で重要になってくるだろう。
そしてそれをあらゆるデバイス、時計から車、テレビ、PC、モバイルなど、あらゆるものにまたがってサービスが存在しており、それを実現するための計算力を身につけていることだ。
筆者はこの中では特にSearchの部分には大きく賛同し、この分野が最も早く変化しているのではないかと思うが、皆さんはいかがだろうか?
次回はパネルディスカッションと特別講演に触れてみたいと思う。