【前回コラム】「テレビの視聴実態をどう切り取るか」はこちら
「アテンション」というテレビ画面注視秒数測定データをいわゆる「視聴質」のひとつとして分析していくと、この数値の変数となるのは、
- オーディエンスの違い
- 放送タイミング(時期・曜日・時間帯)
- 番組コンテンツ(どんな番組に挿入されたCMか)
ということと、クリエイティブそのものの変数の掛け算であることがわかる。
実際にテレビ放送されるCMの効果は、クリエイティブだけの純粋評価だけでは分からない。クリエイティブの事前チェック調査はいろいろあるが、被験者に無理やり観てもらって調査している段階で、実際の視聴環境と違うということになる。また、最初の遭遇での反応しか拾っていないので、フリークエンシーが積まれていった時にどう変化するかまでは分からない。
そして、①のオーディエンスの中で、最も違いが出るのが、人種、年齢などを超えて男女差である。
最近は脳科学も進歩しているとみえ、テレビ番組でも脳科学者が登場し、この男女の脳の構造の違いを話題にする機会が増えている。みなさまも「男女でものごとの感じ方が違う」という話を聞いたことがあるだろう。
いろんな説があるかと思うが、人類が生まれて数百万年の間のほとんどは今のような文化的な生活をしていたわけではない。男性は狩りに行き、獲物を追って遠いところまで行って帰ってこなければならないから、空間認識力が女性より優れている。(よく女性は地図をみるのが苦手とかいう話ありますよね・・。)また、動体視力がよく、動くものへの関心・集中力が効く。一方、女性は形や色に関心と集中力が働く、と言われている。
ニールセン ニューロの多くの測定結果でも、男女差が一番大きく出ることは拙著『CMを科学する』にも取材・鼎談として記した。
そして、この男女の差は視聴質としてのCMへのアテンション数値にも現れる。
CM素材によっては、男性が女性の2倍も注視するもの、逆に女性がダブルスコアで男性より注視するもの、男女両方とも平均値を超えるアテンションを獲得しているもの、男女とも低いものといろいろあるのだ。
きっと女性がターゲットじゃないのかなと思えるCMなのに男性に偏ったアテンション獲得になっているものや、その逆、また男女ともターゲットだろうに、どちらにも強く刺さっていないものなど、様々なデータが出てくる。
とはいえ、アテンション数値で差があることは分かるが、CMのどんな要素・因子・構成が原因なのかは、脳波・アイトラッキングなどの測定調査を行わないと分からない。しかし、ニールセン ニューロが行っているような脳波&アイトラッキング調査を行うと、男女差の要因分析が可能だ。
そうすると、男女それぞれに強く反応してもらえる動画を二種類つくるということができる。
オンライン動画広告は、ターゲティング配信で、男女を区別することが可能なので、それぞれに向けた動画を、それぞれ男女別に配信をして、男性により強く印象づけるCM、女性により強く印象づけるCMを展開できる。場合によっては、テレビでは、女性の含有率が多い時間帯に女性向けCMを流すという素材指分をする、という発想もあるだろう。
視聴者のCMに対する反応が分かると、誰に反応していて、誰に反応しないのかを分析して、本来のターゲットが反応するCMとは・・、その要素・因子・構成は何かを知ることができる。
「CMを科学する」ことの真骨頂がその辺にある。
参考
テレビCMに対する反応は、文化や国籍の違いよりも男女差の方が大きい!デジタルインテリジェンスが「男女脳プロジェクト」をスタート